SWISS PEAKS 2024

LB4~LB5(9/4 16:15~9/6 1:00)GPS距離:91.90km, 獲得標高:5757m

睡眠時間は短いものの気分は上々であった。この区間最初のエイドでラクレットを食べてスープ(ブイヨン)を飲む。その後のCol de Chassoure(2743m)は足場が悪く上部が雲で覆われ始めたためか安全管理のためにスタッフが数か所に待機し、ライトでコースを照らしたりして選手のサポートをしていた。山を超えたところで完全に夜になる。また下まで下りて次の登りへ。この頃から幻覚が見えるようになっていて「山の中で人工物(人間含む)が見えたら幻覚だと思え」と自分に言い聞かせていた。幻覚が見えるというと意識が朦朧として悲壮感があるものに聞こえるかもしれないが(そういう場合もあるが)実際には冷静で思考はしっかりしている場合も多い。「あそこにある車はたぶん岩だなあ」とか思いながら歩いたりしている。夜遅くになって天気は下り坂、雨が降って来た。眠気も出てきて、地面を見ると幻覚で漢字が浮かび上がったりイラストが浮かび上がったりしている。漢字を指で触ったら形が崩れて消えた。

次のエイド山のだいぶ上標高2029mのCABANE BRUNETに近くなったところで眠くなって時々立ち止まっていると、後ろから追いついてきた選手に声をかけられた。「君は次のエイドで横になって休んだ方がいい」と。自分もそのつもりでその選手と一緒に山小屋エイドへ到着。スタッフに1時間寝ると声をかけてから床に転がって1時間睡眠。ちょうど1日前のエイドの仮眠と同じ時間帯、同じような場所だった。起きて準備をしていると田中正人さんによく似たスタッフに(幻覚見まくりなので実際似ていたかはわからないが)「この先雪が降っているからしっかり準備をして行け」と声をかけられ気を引き締めてすべてのウエアを重ね着して出発。しかし動き始めて少し経ったら暑くなってどんどん脱いでいった。

一時はけっこう強く雨が降り、朝だというのに雷が鳴って冷や冷やしたが寒さ的な問題はなく山を超えることができた。次の関門はエイドPRASSURNY(Champex-Lacの少し下)で15時のところ13時に到着し軽く食事だけいただく。1時間睡眠を取ったにも関わらず余裕を広げることができていて、この調子でLB5まで行けるとよいと思った。ここからChampex-Lacへ車が走れる程度のダート道だがすごい傾斜の登り。車で来てブレーキかけたら車輪ロックして滑り落ちるのでは?と思った。Champex-Lacは14時前に通過。シャンペ湖も2018年に一人PTLで補給を求めて駆け込んだレストラン(数分前にオーダーストップで入れてもらえなかった)も健在で懐かしい。

本来ならここからFenetre d'Arpette(2665m)に登るコース。この峠に登るのは2017, 2018PTL+2018一人PTLに続く4回目でとても楽しみにしていた。しかしここからコースデータGPXとコースフラッグが分岐。ロードで大きくFenetre d'Arpetteを迂回するコースを取っている。スマホで地図を見ながらフラッグを追っていくとトリエン(Trient)に向かっている。これはリタイアさせられているのか、どこに向かっているのか?若干混乱する。Fenetre d'Arpetteへの道は知っているので勝手にそちらに行ってしまおうかとも。

かなり長くロードを移動したあとようやく山に入った。これは2018PTLで使ったFenetre d'Arpetteからの下りオフトレイルの逆走ではないか?と思う。山に取りついてもあの尾根を登って行くはずとか、どこに道がついているとかなぜかわかっているのだが、実際にはわかっているはずがない。2018PTLの下りがここだったとしても夜だったし疲労で意識も飛び飛びだったので尾根の形を覚えているはずがない。ここでも明るい時間帯、眠くないにも関わらずやたらと木の切り株や岩が人に見えたりした。あまりにもはっきり幻覚が見えるので写真に撮ってみたところ写真にもそのように写って「これは誰かが特定の方向から見ると人に見えるように作成したトリックアートのようなものだ」と結論付けた(後日徳本さんに力説したがまったく同意を得られずPCの大きな画面で見たらただの切り株や岩だった)。

けっきょくFenetre d'Arpetteに近い標高(2300~2400mくらい?)まで登ったものの別ルートで次のエイドCOL DE LA FORCLAZに下って行った。エイドの時点で18時。遅いランナー見積りより4時間30分早く、LB5までは遅いランナー見積りで2時間30分になっていて、LB5は睡眠も取って問題なく通過できるだろうと思った。エイドからMont de I'Arpilleへは約500mの登り返しで距離も大したことないのだが、なかなか山頂に着かず2時間30分かかり20時40分に山頂を通過。ちなみに登りは明るかったし眠くもなかったが幻覚は見えっぱなし・・・というかこの時点では誰かが仕掛けたアートだと思っていてよく見ると地面に絵が描いてあるーとか思って時々写真を撮りながら登っていた(後日見たらただの地面である)。ほんとにこの区間自分は何をしていたんだろう。。。

日が暮れてここから標高差1200mの下り。ますます幻覚は激しくなりカラフルな光になって見えるようになった。まあこの時点では誰かが仕掛けたアートだと思い込んでいるので蛍光塗料で上手いこと作ったらヘッドライトに照らされてこんなふうになるのかーとか、木の幹に描かれた絵が角度を変えて見ると別の絵になるのってどうやっているんだろうなーとか思いながら(時々写真を撮りながら)山を下って行く。さすがに足裏が痛くなっていてあまりペースがあがらない。時々速いランナーに抜かされるのだが、速い人たちは170kmとか別の距離の人が合流してきたのだろうか?

ちなみにこのタイミングで私のスマホの誤操作でSwiss Peaks 360に参加している日本人メンバーのメッセンジャーグループに私がFacebookのすべての友達を招待するという事件?が起きる。そのとき幻覚(と思っていないがw)見まくりだったので「幽霊ゾーンを下っているときに誤操作が発生」とコメントを残している。意図的にそのような操作をするわけがないのだが、かといってロックが解除された状態でポケットに入れておいても一緒に何か入っているわけでもなくなぜ操作されたのかは不思議だ。その後、Swiss Peaks 360グループは新規に作り直した。

下っても下ってもLB5に到着せず焦り始める。LB5の関門は9/5 1:00でLB4まで関門に1時間プラスされていたので実際は2:00になるはず。しかし23:00を過ぎても到着せず、下りきったと思ったら今度は川沿いの水平移動でかなりの距離が残っていた。主催者見積りのあまりの食い違いに怒りを感じて全力で走りLB5の関門の30分前に到着。プラス1時間猶予があるか確認すると「ここでは変更なし」とのことで30分でLB5を出なければいけないことになった。主催者のコース図で12.5kmのところこちらのGPSでは20数km走っていて、主催者の遅いランナー見積りで2時間30分のところ6時間以上かかっていた(他の場所では主催者の距離と時間読みは正確だったので信頼していた)。ここで怒っても仕方がないので最小限の持ち物を持ってLB5を出る。形だけ出て、出てすぐのところでテーピングを貼るなどの準備をした。

下りで足が痛むようになっていたが原因は足首固定のテーピングのふちにできた水膨れ(左足)とマメ(右足)。指には問題がないためテーピングテープに原因があるかもしれない。しかし捻挫癖がついてしまっているしフィニッシュまであと2日なのでテーピングを外してみるよりは現状維持で我慢かなと思い、水膨れの水だけ抜いておいた。

GPSの計測距離はLB5 Salvanまでで305kmだった。

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