Yukon Arctic Ultra 2016
レース4日目:184km~242km(コフランレイクの少し先~ユーコン川沿いに出る少し手前)
5時30分ごろ目が覚める。出発前にチキンラーメンを食べるためにお湯を沸かす。空を見上げるとオーロラがゆらゆらと広がっていった。今回のレース中の自分の宿題として4月に生まれる子供の名前を決めることにいていたのだが、れなっちが”響き”で候補として挙げていた「○○」(公にはまだ伏せておく)がいいかなあと思った。その名前に意味・願いを付けていけばよい。レースはまだ何日かあるのでそれを第一候補として考えていくことにした。6時30分ごろ出発。
しばらく進んで再び凍った湖の上。オーロラがベルトのように広がっていた。写真を撮りたいがストックにカメラを付けて撮る方法はストックを突き刺せるだけの雪がないといけないため凍った湖では突き刺すことができなく手持ちでぶれた写真しか撮ることができなかった。山で見るオーロラもいいけど平らな湖から見るオーロラも神秘的。
夜が明けて10時ごろフランクレイクに到達。一部水面が覗いていて「FLANK LAKE BAD ICE STAY LEFT ON TRAIL」と書かれた札があった。ここが櫛田さんの言っていた温泉が湧いている湖がある場所かもしれない。少し進むと「TO CARMACKS」という札もあり「早くカーマックスに着きたいなあ」と思った。足先のベイパーバリアによる水ぶくれ(のような感触)もブレイバーンから先、違和感、痛みが大きくなってきていて、前日は平らな湖の上をがしがし走っていたが痛みにより走る気力が削がれるようになってきた。
13時過ぎにれなっちに電話をして前後の選手の状況と天気予報を聞く。今日以降は昨夜のような冷え込みはなくマイナス15度程度の予報とのこと。前は10マイルほど先に選手がいるらしい。後ろに残っている選手はリタイアした人か?14時で気温はマイナス15度。CP4 KEN LAKEまであと3時間程度か。お昼ごろからパラついている雪でトレイルの足跡が薄くなっている。もともと湖の上で固いのでしっかりした足跡ではないため少しの積雪で消えてしまいそう。とぼとぼ歩いているとCP4 KEN LAKEその先のカーマックスが果てしない遠くに感じ気持ちも落ち込みがち。しかし歩き続けていれば間に合う計算。それにしてもどうしても夜遅くまで動いた分で前の選手数人を抜かし、こちらが寝ている間に最後尾になるというサイクルから抜け出せない。
日が沈むころ17時20分にCP4 Ken Lakeに到着。到着前にCPを出発する3人の人影が見えた。彼らがれなっちの言っていた10マイルほど前の選手だろうか。Ken Lakeのチェックポイントは基本的にはテントの中で休めないチェックポイントだが他に選手の姿もなくテントの中で休むように促された。服を脱ぎ薪ストーブの上につるして食事をいただく。暖かいコーヒーもいただいた。足の裏を見てみると意外ときれいでとても痛いが血豆のような感じで水ぶくれではなく傷口も開いていなかった。これなら我慢すれば大丈夫かもしれない(これが間違いでせめてこの段階でベイパーバリアをやめれば結果は変わっていたかもしれない)。
CPのテントにはお湯の入った大きな鍋が2つ入って係りの人は「こっちはOK」「こっちはNot OK(準備中)」と教えてくれて自分でお湯をボトルに注ぐ。 OKなほうの鍋のお湯がボトル1本分足りずになくなってしまい、係りの人は隣にあるロッジに撤収してしまったので、準備中の鍋をのぞいてみると十分熱湯になっていそうだったのでそれを注ぐ。 準備中のほうはすごく茶色っぽかったけどないよりはましかと思った。 (出発後にあまりにも泥臭かったので捨てた。飲める状態にするにはもう一手間必要らしい。しかし次のカーマックスまでお湯は足りた)
19時にCP4 Ken Lakeを出発。次は56km先のCP5 カーマックス。また20時間程度の行程になることが予想される。ほんとに果てしない旅だな。足先の痛みに加えて疲労で股関節も少し痛いのでペースは上げず落ち着いて進みたい。カーマックスの制限時間には余裕があるので。また平らな湖の上を進んでいくと1人の選手を抜かした。CP4 Ken Lakeに入るときに見かけた人影とは別なので意外と近くに集団がいるのかもしれない。平らな湖の上で明るいオーロラが出てきて見事な景色。前夜(今朝)に続き凍った湖の上ではストックを三脚代わりに突き刺すことができず撮影は断念。代わりに小休止することにしてソリに腰掛けフリーズドライを食べながらオーロラを鑑賞した。オーロラを眺めながら子供の名前はやっぱり「○○で決定だな」と思った。「○○。よろしくね!」
湖地帯を抜けて山に入る。午前0時を過ぎて歩いているといつもの通り何人かの選手がビバークしているのを抜かす。午前2時こちらもビバークすることにする。なんとかビバークしている間に追いついた選手たちの集団に入りたいのでビバークを手短にしたい。そこで試しに設営なしで寝てみることにする。シェルターを地面に広げポールで立ち上げずに中にマットをエアを入れずに敷く(ないよりはましだろう)。その上にシュラフを入れてシューズだけ脱いでシュラフに入る。ビビーを使わないのは前夜と同様自分のウェア自体でベイパーバリアをしているため。10分で就寝準備完了。これなら早い!(正しくはないけど)多少の冷たさを背中に感じつつ眠りに落ちた。