Yukon Arctic Ultra 2016
レース1日目:スタート~75km
朝はなるべくぎりぎりまで寝ていることにする。8時に起床。寝つきは悪かったがそこそこよい睡眠が取れたと思う。最後に天気予報を確認し気温がそれほど上がりそうにないことを確認してスノーシューを装備から外した。日本出発時にはレース後半は気温1桁まで上がる予報だったが全体的にマイナス15度から20度くらいになったので雪が解けて歩きづらいということは考えなくてよさそう。食事を済ませて9時ごろからホテルのロビーに荷物を運ぶ。チェックアウトしホテルで預かってほしい荷物を預けてレース装備のみになる。砂漠のレースでもそうだが荷物を預けて走るときに手元にある荷物だけになった瞬間は忘れ物がないか少し不安になる。
9時30分に出発と聞いていたのでソリとソリに乗せるバッグをトレーラーに乗せる。しかし人は乗っていかないみたい?荷物はどんどん積まれていき待っている人はだんだん減っていく。去年は選手はバスでまとめて移動していた気がするけど、自分でシップヤードパークまで歩いていくようだ。そこで櫛田さんに電話してシップヤードパーク待ち合わせではなくホテルに来てもらうことにした。ホテルでピックアップしてもらいスタート地点へ。10時10分ごろ到着しすぐにソリをスタート地点に並べてハーネスに装着する。去年はのんびりしていたら準備をしているうちにレースがスタートし取り残されるという苦い経験があるので早め早めで。今年は幸いハーネスの部品の紛失もなく準備万全。そして長い長いレースはスタートした。
気温はマイナス5度と温かい。南からの風が強いが追い風なので助かっている。最初のユーコン川~タキーニ川は凍結した川の上を進む平らなコースのため今回は走ることにする。前回は体力温存とここでの1~2時間の差が全体に与える影響はないと思っていたため全て歩いていた。しかしそれだと走りやすい川の上にいる間に夜になってしまい、さらに眠気に弱い自分にとっては暗くなると眠くなりやすいということで、明るいうちに少しでも先へ進んだほうがよいと考えた。理想的にはCP2のDog Grave Lake(95km)まで一気に行くこと。行けたとすればスタート翌日の午前6時くらいになると思われる。これはかなりうまくいった場合なので、現実的には前回リタイア地点(75km前後?)が目標となるか?
ユーコン川の上をさくさく走る。氷の上を水が流れているオーバーフローもあるとの情報があったが大丈夫そう。少し体が温まったら暑くなったため上着を脱ぎ薄手のアンダー2枚になる。最初の薄手アンダー2枚は走って汗をかいて寒くなったら着替えてしまう予定なので(序盤走るための使い捨てウェア)いくら汗をかいてもかまわない。日焼け止めを塗り忘れていたので塗ってから再スタート。ジョギングイメージで走っていると前の選手を次々と抜かすことができる。スタート直後のボーナスみたいなものだと思うが、ソリは軽く感じソリに前進する惰性がついていることで走っても歩いても負荷は変わらないように感じる。高い崖の上で櫛田さん、杉本さん、岡部さんが応援してくれていた(一人ひとりの判別まではできず)。
さらに走って前に出ていくと先行する足跡も少なくなり走っていても他の選手を抜かすことがなくなる。前の選手も後ろの選手も走っているためポジションが落ち着いた。気温は上がってプラス5度近くまで上がった。タキーニブリッジ(約20km)が見えたところでペースを落とす。汗をたくさんかいて嫌な感じだし、このまま走っていたら明日は筋肉痛になりそう。去年はここでれなっち、櫛田さん、ちほさんが応援に来ていて一緒に歩いたなと懐かしく思っていると、橋の下に取材の岡部さんと杉本さんが来ていた。せっかくなのでここで小休憩し補給していくことにする。ちょっと止まっている間に続々と走って通過する後続選手たち。けっこう真面目に走っていたのに全然差を付けれていないばかりか、むしろ彼らのほうが余裕があるように感じる。みなさんどれだけ超人なんでしょうか。
タキーニブリッジを出発し少しペースは落とし気味にする。気温が上がって雪が緩んでいるところもあるため、足場のよいところだけ走るようにし、傾斜があったり足場の緩んでいるところは歩き。見通しが利くところでは休憩中に抜かしていった選手たちが確認できるが追いつけそうにはない。大部分走った効果で完全に明るい16時24分にCP1のRivendell Farm(35km)に到着。去年よりも2時間早い。このCPはオフィシャルでは42kmとなっていてマラソンの部のフィニッシュなのだが、去年のGPS計測では35km弱。今年のGPSでも35km強だった。(マラソンの部は少し通り過ぎてから戻ってくるらしくおおよそ42kmあるとのこと)
気温はまだプラスだが風もあり汗をかいたウェアで止まると一気に寒くなる。すぐに次の区間用のアンダーウェアに着替え上着を着る。スープとサンドイッチとチョコケーキ?をもらいスープとサンドイッチ半分はその場で食べる。一気に食べたら「おえっ!」となったのでサンドイッチの半分とチョコケーキ?はソリに乗せて持っていくことにする。お腹が落ち着いたらまた食べよう。そして保温ボトル3本(900ml×2、480ml×1)にフルにお湯を入れてもらう。CP1まではそんなに時間がかからないためスタート時には900mlのボトル1本は空にしていたが次の区間からは長くなるのでフルにする。マラソンの部に出たホワイトホース在住の日本人の方々とも会うことができ応援してもらえた。17時9分にCP1を出発。
お腹が落ち着かず「おえっ!」となるため少しずつお湯を飲みながら基本的には歩きで進み、時々少し走る。気温0度程度なのにここでの服装は、去年マイナス30度を下回っていたときと同じものを着ているのにちょうどいい感じ。なぜなのか不思議だが、この後気温が下がったときに同じウェアで大丈夫なのか少し不安になる。暗くなってきたところでヘッドライトを出すついでにサンドイッチの残りを食べた。具(ポテト)が凍りかけてシャリシャリしておいしい。気温は下がってきてマイナス2度になった。暗くなったらやっぱり少し眠くなったためGoproで自撮りインタビューして眠気を飛ばす。話をしたり少し違うことに脳を使うと目が覚める。
途中で一緒になった選手に「今日はどこまでいくつもりなのか?」と聞かれ「CP2まで休まずに行くつもりだ」と答えると「リスペクト!」と言われた。CPで休んだほうが効率いいと思うんだけど途中で寝ていくほうが多数派なのかな?さらに少し進むともうタキーニ川から上がるところについた。前回よりもかなり早い感じ。前回はCP1から先のタキーニ川ですでに「眠い、眠い」と蛇行が始まっていたのでなかなかたどり着かなかったんだよな。
前回眠くて仕方なくやっとたどり着いた広場に到着。カメラマンのデレクが待ち構えて写真を撮ってくれた。前回はここで櫛田さんとれなっちの最後の応援がありマイナス37度でビバークしたところ(TV番組の靴下凍っちゃいましたの場所)。今回は8時20分マイナス5度と前回に比べてあまりにあっさり元気に到着。前回よりも3時間30分くらい早い。先へ進むとトレイルの「TRAVEL AT OWN RISK」の看板の広場のところで何人かテントを設営していた。日付が変わるのを待たずにもうビバークしてしまうのか。さらに進んでいくと0時ごろからはいよいよビバークする人が増えてくる。前回たき火で靴下を乾かそうとして焦がしてしまった場所とか懐かしい場所を通過していく。前回はこの辺でだいぶはまっていたため単純計算ですでに10時間程度早くなっている。
空は雲一つなく星がすごい。オーロラが出ないか期待大。しばらくするとオーロラが出てきた。一部明るいものも出てきたので写真を撮る。レース中なので写真は数枚で自粛し歩きながらオーロラを眺める。少し眠くなってきたのとビバークしている選手が多くなってきたので少し睡眠を取っていくことにした。どうせなら前回リタイアした地点まで行ってビバークし前回の再スタートをする形にしようと前回リタイア地点を探す。正確に前回リタイア地点を見つけることはできなかったが(戻って探すようなことはしないし)GPSで75kmを超えたところで少なくとも前回リタイア地点は超えたと判断してビバーク。時間は午前3時過ぎ。れなっちに衛星携帯で前回リタイア地点まで来たこと、それなりに脚を使って前進したのでけっこう疲れたことなど伝える。気温はかなり冷えてきてマイナス15度。油断ならない気温になってきた。
シェルターを立ててマットを膨らましシュラフを放り込む。さらにシュラフライナー代わりのエマージェンシービビーをシュラフの中に入れて自分も入る。エマージェンシービビーにアンダーウェアのみで入ったらすぐにじっとりと汗が出てきて、このままだとウェアがびっしょりに濡れてしまうため脱いでパンツ1枚にエマージェンシービビーの状態にする。シュラフのベイパーバリアは基本的に裸にベイパーバリアライナーらしいので。ところが裸(パンツは履いているけど)にエマージェンシービビーになったらシートがサランラップのように体に張り付いて身動きできなくなってしまった。寝返りすらできない、というか手を動かすことすら困難な状態だがとりあえず寝ることにする。絶対に何か間違えている気がするなー(笑)