Yukon Arctic Ultra(本編)
1人ユーコン1回目 Day 2
目を覚ますと8時30分だった。すっかり明るくなっている。食事をして装備をまとめて9時30分に出発。7時間の停滞になった。 ぐっすり眠れたのはよかったが、夜フラフラになるまで歩いて明るい時間まで寝ているよりも、もっと早くキャンプにして明るくなりはじめた時間に動き出したほうがいいと思った。 レースのときも同様。自分はやっぱり眠いのを我慢して動くのは苦手だ。
1時間ほど歩いたところでお湯の残りが少ないのでお湯を満タンに作っていくことにする。空の状態から2.2リットルのお湯を満たすまでどのくらい時間がかかるか測ってみた。 雪から沸騰までなかなか到達せず1時間10分くらいかかってしまった。これは時間がもったいなさすぎる。お湯の作成はビバーク時にツェルトの準備と同時進行でおこなうべきだった。 あるいは水分を取るという意味でなら沸騰までいかなくてもよいのだが、 自分の場合は食欲を維持するためにフリーズドライ食品を多くしているため美味しく食べるためには少しでも温度の高いお湯を用意しておきたい。
デジカメをストックに取り付けて自分撮りするための部品の先端のネジがなくなっているのに気がつく。どこで落としたんだろう。戻るときに探してみようと思う。 copper trailの反対側(北側)端まで歩いて折り返す。行きの後半はずっと緩やかな登りに感じていたため、折り返したらスピードアップするぞと期待していたのだが、 折り返してもずっと緩やかな登りに感じる。この錯覚はなんだろう。デジカメのネジを探しながらトレイルを戻っていく。 真っ白な雪の上に黒いネジだからあればわかるだろうと思ったが見つからない。
夕方になると爆音を響かせたスノーモービルのグループがトレイルを行ったり来たりしている。走り屋みたいなものか。 copper trailとようこさん宅への道の分岐点まで来たがデジカメのネジは見つからなかった。 ということは、昨夜山からの下りで自分撮りを使っているのでマウントシマ前後数キロの範囲で落としたはずだと思った。しかしネジだしまあいいか。
19時30分に生存報告のためようこさん宅戻り。Day1終了。30時間、移動距離70km。レースで言ったら完走ペースを下回っている残念なペースだが、 レースにはないがっつり登りがあるしトレイルも新雪が荒れてざくざくで歩きにくかったので、実際はもっといいペースが作れるだろう。 レースのコースはコース整備が入った上に先にスタートしたユーコンクエストに犬ぞりたちが通っているためトレイルはしっかり硬くなっている。 ベイパーバリアライナー代わりのスーパーのビニール袋は破れてしまったので、2日目は薄いネオプレンソックスを履いていくことにする。 れなっちがドロップバッグに仕込んでいたバレンタインチョコ(仮)を食べて20時45分に再出発。
再びざくざくに荒れたcopper trailに入る。歩きにくくテンション下がる。するとカーテンのようなオーロラが目の高さの空をゆらゆらしている。 明るい光がさーっと流れていくので写真に撮りたかったが残念ながらカメラのネジをなくしているので夜景モードできちんと撮影できない。 いちおう手持ちで撮ったが手ぶれ込み。レース中など山行中に見る星空は天体観望などそれ目的で出かけたときよりもなぜかきれいに感じるので好きなのだが (その割りに夜は即眠くなるが)山の中で見るオーロラも格別なものだった。しばしオーロラを眺めていたら、もう十分がんばったから帰ろうと思う。 暖かい部屋にいると次はこんな練習しようとか、来年もう一度チャレンジとか思うのだが、寒かったり、暗かったり、眠かったりするとすぐに「やっぱり大変だな」と弱気になってしまう。 24時ごろ引き返し始める。トレイルを出てから8kmほどは道路の路肩の雪の上を歩くのだが、眠くなってときどき意識が薄っすらとしかなく、気がつくと「ここはどこだ?」というようなことがあった。 帰り道の途中でも明るいオーロラを見た。空の端から端まで天頂付近を真っ二つにするオーロラは迫力満点。気温はそんなに低くないと思うが日中汗をかいてそのままのためかグローブがすごく冷たく感じる。 やはり少しでも水分がついたものは低温になったり風を受けたりするととたんに冷たくなってくる。
3時30分ようこさん宅帰宅(変な時間に帰ってすみません。心折れました)。Day2、6時間45分、20km。 即席ベイパーバリアのネオプレンソックスを脱ぐと一箇所皮膚がむけていて足のあちこちに赤い点々ができていた。 専用商品でない適当なものだからというのもあるとは思うが、黙々と長時間歩き続ける今回のような用途にはもしかしたら向いていないかも。 ベイパーバリアの実績がある登山や探検ならたぶんもっと動きはゆったりしたものだろうと思う。 力技だけどソックスは日数分用意して一部ベイパーバリア併用。動きの少ないグローブはベイパーバリアなんていう方法がいいかもしれない。