The Last Desert

ホーン岬・表彰式

ひたすら暇な1日。だいぶ南アメリカ大陸が近くなってきた。南米最南端のホーン岬を見ることができるかなと思っていたら午後になり船はホーン岬に到着。デッキに出るとホーン岬が見えるほかイルカが船と並走している。オリビエと少し話しをした。オリビエはやっぱり私よりも少し上の力を持っていてフルマラソンのベストは2時間46分。ただ膝に古傷がありアップダウンのあるコースだと痛みが出てしまい南極の不安定な足場では本来の力を出せなかったようだ。一番の目標・好きなレースはサハラ・レースで平らなコースが得意らしい。南極は船の移動が辛いねという話から「レースなしで観光として南極に行こうとは思わなかったかな」と。これまでの砂漠レースでも観光だけで果たしてそこまで行っただろうかという僻地へ赴いている。このレースのおかげで普通の人がなかなか経験できない世界を見て来れたのだ。

夕食のときにはすでに船はビーグル水道の入口にいた。しかしそれ以上先へ進まず停泊している。ここから先は海が浅く座礁しないように水先案内人が船を先導していくのだとか。だけどウシュアイアから南極に向かうときは船の前に案内がいたりはしなかったよな。さっさと進めば今日中にウシュアイアに帰れそうなのに。早く陸に上がりたい。

夜は表彰式。集まった選手たちの一部はエマージェンシーシートでドレスアップしている。金色と銀色できらきらしたエマージェンシーシートをドレスのように着ている。いよいよ入賞の楯をもらえるのかな?と期待は最高潮。もしかしたらコメントを求められるかもと不安も少々。まあなるようになるさ。男女の優勝者ビンセントとアンナ・マリーが表彰された次に突然名前を呼ばれた。優勝の次は2位ではなく3位を先に表彰するのか!?片手にカメラを持ったままなので誰かに撮ってもらおうと渡す相手を探すが日本人選手は後ろの方にいて見つからない。すると韓国のユニくんと目が合ったのでとっさにお願いとカメラを渡す。(ユニくんが写真撮ってくれました)

期待通り今までの砂漠レースで「あれほしいなー」と眺めていたガラスのオブジェがついに目の前に!南極の氷をイメージして少し青く光っている。そしてやっぱりコメントを求められマイクを渡される。そうなったら単語並べるだけでも自分でコメントしようと少しは思っていたが頭の中真っ白で脚も震える(笑)村上さんから「がんばれ!」と激が飛ぶ。しかし近藤さんが目に入ったので「通訳お願いします」と頼んでから「今まで一緒に走ってくれた選手の皆さんと素晴らしい経験の場を作ってくれた主催者に感謝します」とコメント(これくらいの内容なら自分の英語で言えるじゃん!と頭の片隅で思った)。

ガラスのオブジェを手に日本人選手みんなのところへ。めちゃくちゃ嬉しい!最後の砂漠レースで形に残る物を(完走メダルの他に)持ち帰りたいと目標にしていたものを手に入れることができて本当によかった。美絵さんが「日本人が表彰されるなんて誇らしいねー」と言う。自分も嬉しいけれど周りの人に喜んでもらえるのがさらに嬉しいこと。オブジェには名前を書く(彫る)場所があるのだが誰が手にするかわからないため名前は入っていない。帰国したらガラスを加工してくれるようなところに出して名前を入れよう。名前が空欄になっているのを見つけたひろっちが「マジックで名前書いちゃおうか」と言っている(その後もそういう人が後を絶たない)。

表彰は4Deserts制覇達成者への4Desertsメダル授与へ。RacingThePlanetの主催レース「エジプト・アタカマ・ゴビ」のうち2つ以上を完走しないと出場できない南極レースだけに対象者がすごく多い。あと1年間で4つの砂漠を全てという人もたくさんいて驚いた。そんなにお金と時間を作れるってどういう人なんだろう。日本人参加者の中からは、宍戸さん、村上さん、美絵さんの3人が達成。自分は2009年にリタイアしてしまったエジプトを完走すれば4Deserts制覇だけどいつかやるのだろうか。南極レース最後の幸せな夜。いよいよ明日の朝はウシュアイアに帰還だ。