北アルプス山岳記録
2009/08/12(水)〜15(土)
【2日目】ヒュッテ西岳〜南岳小屋
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朝4時過ぎに目を覚ますが外は大荒れの天候。当初の予定では4時出発だったがこの天気では動く気にならず どうしようか考えつつテントの中でごろごろ、と言っても通気口から雨が吹き込んで快適ではない。周りのテントの人たちも出発が遅れているようだった。様子をうかがっているとこの天候で槍ヶ岳を目指す人は少数派で水俣乗越から槍沢に下りる人や大天井岳のほうに向かい燕岳から下山という人が多そう。6時くらいに仕方なくテントの出入口を空けて朝食にするためにお湯を沸かす。風が時々強く吹くがガスコンロでお湯を沸かすのに不自由するほどではなかった。雨も土砂降りというほどではない。食事をしてからテントをたたみ7時に槍ヶ岳に向かって出発する。
昨日の西岳までの行程ではハシゴや鎖もなく歩きやすい登山道だったが槍ヶ岳への登りに入ると異様に長いハシゴがあったり厳しさを増してきた。ハシゴは「もし滑って落ちたら確実に死ぬ」というような場所に設置されている。ハシゴの下に落ちるというよりハシゴの下の足場が非常に狭いので落ちた場合はさらに崖から落ちて下手すると数百メートルは滑落しそうです。尾根を巻いていたり木があったりすると風や雨はあまり気になりませんが、細い尾根の上を通行中に風が吹いたりすると姿勢を低くして待機したりすることもありました。途中で槍ヶ岳方面から1人登山者がやってきて「今日はほとんど登山者を見ないですね」と話していた。槍ヶ岳方面の危険箇所などないか聞くと「槍の穂先へ登るのにハシゴと鎖があるけどそれ以外はこの辺の普通の登山道」ということだったのでとりあえず槍ヶ岳山荘まではこのまま進めそうだ。残りの水が少なくなったのでヒュッテ大槍で水を1リットル補充。
槍ヶ岳が近づくと風雨が強くなり向かい風に向かって進むところではまっすぐ前を向けないほど。レインウェアにバリバリとすごい音を立てて雨がぶつかってくる。槍ヶ岳山荘には9時28分に到着。視界は10〜20メートルくらいか?という程度なので槍ヶ岳の山頂に行ってもあまり意味がないかなと思ったがせっかくここまで来たので山頂だけ踏んでこようと思う。が、槍ヶ岳山頂への案内板がなくどこに行けばいいのかわからない。普通の天候なら槍ヶ岳山荘の目の前に槍ヶ岳の山頂が見えているはずなので案内など必要ないのだろうが、今日の天候では山頂どころか山そのものも見えない。仕方がないので登山地図をよく見て山頂は山荘の表示よりも少し北東になっているので「こっちかな?」とあたりをつけて山荘からちょっと(50メートルもないくらい)歩くと登る道が見つかったので山頂に向かって登り始める。かなり激しい風の中ゆっくり登って行く。
登っていてもちょっと先までしか視界が利かず槍の穂先を見ることなく垂直の長いハシゴを登り山頂に到着する。槍ヶ岳の山頂は話に聞いていたとおり狭かった。この天候でも山頂には何組かの登山者がいたがのんびり滞在するという感じではなく写真を撮ってすぐ降りるという感じのようだった。そもそも滞在していたらあっという間に低体温症になってしまうだろう。山頂から降りようとすると一足先に降りようとしている2人組がいたがグローブをしていない。気温が低く雨風が強いのでグローブをしていないと体温も下がるし手の握力も落ちてくると思うので素手で金属のハシゴや鎖をつかんで危険箇所を通過するのは怖いと思う。長いハシゴを下りて行く彼らを見てはがれ落ちないかと心配になった。自分もハシゴを下りて山荘を目指す。途中でお互いをザイルでつないでロープを送り出しながらソロソロと下りているパーティを抜かす。グローブしていなかった登山者もどうかと思うが、ザイルでつないでというのもやりすぎな気がする(雪山登山しているみたい)。まあ何も対策しないよりは必要だと思ったからそうしているんだしアンザイレンのやり方すら知らない自分よりは上級者だ。
槍ヶ岳山荘に戻り何か温かいものでも飲もうかと山荘のメニューを見ると、ホットコーヒー・ココアが500円に対し、カップラーメンが400円。カップラーメンにすると、またも自給自足から外れてしまうが100円安い上に体が温まりカロリーも取れるということで誘惑に負けてカップラーメンを食べる。けっきょく槍ヶ岳に登りながら槍ヶ岳の姿を見ることなく通過することになってしまうが南岳小屋に向かって出発する。槍ヶ岳山頂で見かけたグローブをしていない2人組を抜かすが、相変わらず寒さの中グローブをせず手が真赤になってむくんでいます。槍ヶ岳山荘を出てしまうと南岳小屋まで標準タイムで2時間50分行くしかないので「大丈夫なんだろうか」と思う。
この区間は登山道は快適で少し走りも交えて進むことができた。途中で槍沢から上がってくる合流点で中高年登山者に南岳の方角を聞かれて「こっちですよ」と教える。この悪天候の中、地図コンパスなしで稜線に上がってきますか〜という感じだが本当に山にはいろんな人がいる。南岳小屋に11時53分に到着。南岳小屋の標高はちょうど3000mだった。南岳小屋の玄関に入ってここまでにするか、もう一つ進むか悩む。少なくとも今日はこの嵐の中でテント泊するのはありえません。自分の装備は好天のときのみのテント泊装備だと考えています。しかも前日にシュラフ濡らしちゃってるし・・・。テント泊したら今年の大雪山の集団遭難事故(低体温症による死亡)と同じ状況になってしまいます。今日はスタートも遅かったし体力的にも調子がいいので「北穂高小屋まで行こう!」と思いザックを背負って出発します。
しかし北穂高に向かう登山道の入り口にこんな看板がありました。

「近年、これより先の大キレットでは重大事故が頻発しています。大キレットは難易度・スケール共に日本屈指のハードなルートが続きます。いま一度、天候・体調・装備などを確認の上、事故のないように気を引き締めて!無事に通過されることを願います。南岳小屋」

「・・・今日はここまでにしよう」ということで南岳小屋に退散。テント泊は断念するものの自炊はするので素泊まりで申し込みます。宿泊者はミネラルウォーターを500mlもらえました。
濡らしてしまった衣類を乾かしたいので夜用の服装に着替えてから乾燥室に干しておきます。山小屋の乾燥室は当り外れがあって乾燥室でがんがんストーブを焚いてしっかり乾かしてくれるところもあれば、次の日になってもまったく変化なく濡れている場合もあるので次の日にどうなるかはわかりません。過度な期待はせず「明日はたぶん晴れなので次のキャンプ地で干せるだろう」と考えます。山小屋の割り当てられたスペースに横になっていると自分の次にチェックインした人が隣にやってきました。一見してトレイルランナーとわかる服装と装備。特に話しかけませんでしたが北アルプスにもランナー来てるんだなーと思いました。自分は山では仮面ランナー(移動速度が速くても見た目は普通の登山者)なので向こうから話しかけられることもありませんでした。今日は山小屋大混雑。難所を前に悪天候で足止めを食らった人とテント泊予定だったが断念した人が集まったのだと思われる。
次の日の作戦は、おそらく晴れるので晴れの前提で上高地まで行くことにする。心配なのはこの先の難所で渋滞が発生し時間をロスして距離を稼げなくなること。そのため朝は朝食を摂らずに山小屋泊の人たちが朝食を食べる時間に出発することにする。あまり早いとこの先すぐに始まる危険箇所でまだ暗いと危険なので5時出発予定。21時ごろ就寝。
■本日攻めた山
槍ヶ岳(3180m)
大喰岳(3101m)
中岳(3084m)
南岳(3032m)
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