サハラ・レース
2009/10/29(木)
Stage5 The Black Desert March(87.6km、12:43’30、11 位)
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いよいよロングステージ(通称オーバーナイト)。このステージは2 日間の制限時間でおこなわれる。1 日で走破してしまえば次の日はのんびり1 日過ごすことができる。今回のサハラレースではこのステージが終わればあとは最終日のウィニングラン(時間計測なしの1km 程度)なので実質最終ステージとなる。自分はトレーニン グをフルマラソン用でおこなっているため、このような超長時間のステージは苦手である。それだけにこのステージは次の砂漠レースに向けても良い経験を積む場としたい。
スタートが朝6 時と早いので朝の気温の低い時間帯を最大限に利用しようと考えた。最初の40km は気温がそれほど上がらないはずなので速いペースで進む。そのあとは気温の上昇にあわせて苦しまないようにペースを落とす。夕方涼しくなったら少し走り最後の砂丘地帯は歩きで。ペースとしてはメリハリをつけるが体の負荷はなるべく一定の作戦。一桁順位を目指す。
4 時に起きて暗闇の中準備をおこなう。思ったよりも寒くないので半袖・ランパンでスタートすることにする。9 時スタートのトップ16 はのんびりと食事をしている。藤岡さんとスタートの際に少し話をしたら彼は「最初 抑えてイーブンで押すつもり」「樺澤さんの次くらいにゴールできるようにがんばります」と言っていた(そして、それが現実になるのだった)。自分とは対照的な作戦なので予定通りに行けばレースの終盤まで会うことはないだろう。6 時スタート。走り始めたらザックの中の食料が減ってきた分なのか少しザックのベルトが緩んだ気がしたのでゆっくり走りながらベルトの調整をおこなう。それからペースを上げて先頭へ。途中でクレイジーマンに「Japanese My Friend」と声をかけられた。
後続との差を一気に広げ独走態勢に入る。トップ16 がいないのでスピードのあるランナーはいない。CP1 で後 ろから1 人追いついてきて驚いたがCP1 出発後はすぐに見えなくなる。朝日が当たり始めた砂漠を1 人走る。 涼しくて気持ちがいい。CP2 ではスタッフが双眼鏡で見ても後ろのランナーが確認できなくなっていた。CP3 までもあまり変化のない景色と固い地面。
CP3 ではスタッフに「ランパン換えたね」と言われて驚く。なぜ覚えているんだ?(でもランパンを換えたのは2 日前で前日のステージとウェアは一緒)CP3 を過ぎると少し日差しが強くなってきた。「CP4 までは暑くならないでくれ」と思いながら走る。まだ涼しい風が吹いていて心地よい。コース説明に「CP4 に向かってダウンヒル」と書いてあったが下る気配がない。「ダウンヒルはまだかー?」と思いながら、そろそろCP4 が見えてくるころというところまで来てしまう。
急に切り立った崖の上のようなところに出る。ここから先は登山道のような下りになっていて下りきった平地の向こうにオアシスの村と緑が見える。一気に駆け下り村に向かって走る。途中で目印のフラッグが見当たらなくなって焦ったがスタッフの車とCP を確認することができた。CP4 までは暑くなる前に高速で距離を稼ぐという のは達成。
CP4 を出発するとコースは村の中を通過する。自分の前をスタッフが走って目印のフラッグをつけている。もしかして準備ができていなかったのか?(後から聞いたらフラッグをつけても村の子供たちが面白がって取ってしまうので大変だったとのこと)民家のある場所を通りすぎると足元は柔らかい砂地になる。周りには緑が豊富で雰囲気は和やかだが足元だけは砂丘と変わらない。砂地の登りはグミを食べながら歩く。
CP5 までは足元は砂地だが緑の中をじぐざぐと進む。途中の工事現場みたいなところで地元のおじさんに「Welcome!」と声をかけられたり、芝生に牛がいたり、用水路を水がたくさん流れていたり、砂漠とは違って変化に富んでいて面白い(ただし足元だけはずっと砂地)。CP5 に着くと近藤さんがいて「速すぎるよ」と言われる。「このまま押し切るつもりはなくて作戦なんでー」って感じ。
時間は12 時10 分。6 時間10 分で50km 進んできた。残りは37km となりちょっと気が楽になる。明るいうちのゴールも現実味あり。ただそろそろ気温が高温になってきたのでスローペースでエネルギー補給に注意しながら夕方を待つ作戦に切り替える。CP5 の脇にはプール?があり水がたくさん貯められていた。近藤さんが「CP4 でお茶もらった?」と言う。それはもらっていない、まだ準備ができていなかったらしい。
もう1 袋グミを取り出してCP5 を出発。グミを食べながらCP6 に向かう。一番暑い時間帯なので無理はしない。しかし気持ちのいい風が吹いていて昨日までに比べると涼しいように感じる。CP6 へも思ったよりも早く到着することができ「これはけっこう好記録になるかも」と思い始める。CP6 はお湯をもらえるCP と説明を受けてい たのでお湯があればカップラーメンでエネルギーと塩分を補給しておきたかったが、やっぱり到着が早すぎたのかお湯はなかった。しかたがないので今日使う予定ではなかった最後のグミをザックから取り出す。ここでスタッフが「クリスー!」と歓声を上げる。「もう9 時スタートのトップグループが来たのか?どんなペースで走って来たんだ?」と驚愕する。クリスはCP でも素早く準備して先に行ってしまった。
CP6 からCP8 までは単調な景色の中がまんの走り。平らなところと下りはスローペースで走り登りは腕をしっ かり振って歩く。CP8 今日の最後のCP を過ぎるといよいよこのレースも終わりが近づく。もう走る力はほとん どなし。それにしても1 位のクリスに抜かされてからずいぶん経つのに2 番手がこない。どうなっているんだ?と不思議に思う。太陽がだんだん沈んでいき日没前ゴールは難しそう。太陽との競争になる。最後の区間の中間地点の目印のところでかなり暗くなってきたのでザックを下ろしライトの準備。超強力なハンドライトを前方に向けると目印のフラッグにつけられた反射板がきらきらと光って道を示してくれる。残り4km!
最後の砂丘地帯に入り走る気力はなく、というか作戦でも「最後は歩き」と考えていたのと後ろから追いついてくる気配もないので堂々と歩く。途中振り返ると遠くに小さな光が見えた。2 位の選手が来たかな?と思ったがまだだいぶ遠いので気にせず歩く。しかし少しするとその光はあっという間に追いついてきた。暗闇の中から「ハロー」と選手が現れ「ハロー」と返すと「あれっ?樺澤さん?」と話しかけられる。なんと藤岡さんが追いついてきた。かなり速いペースで追いついてきたので「ダメだ今日は負けたー!」と思ったが離れていく後姿を見て「やっぱり負けたくない」と思い走り始める。
少しずつ追いつき並走になった。自分の余裕のなさを隠すために「最後にこんな砂地をコースにしやがってー」とか話しかけながら走る。あまりにもきついので一度ライトを消していなくなったふりをしつつ、こっそりついて行って最後のスパートに賭けるかとか姑息なことも思いついたがそこまではしないでなんとかついて行く(でもやろうとして一度ライトを消した)。
少しだけ自分が前に出た状態で岩場を回り込むとゴールが見えた。「キャンプ地見えたー!」と藤岡さんに声をかけてラストスパート開始。距離は500m もないくらい。脚はとっくに限界だと思っていたが「負けない」とい う強い気持ちがあればまだ走れる。キャンプ地はなぜか高台の上(泣)。まっすぐ明かりのほうに向かって走るとゴールを見上げながらさらさらの砂の壁が出現。「なんだこりゃー!」と思いながら両手両足を総動員して泳ぐように砂の壁をよじ登りゴールに駆け込む。迎えてくれたスタッフと抱き合いゴールを喜ぶ。本当にほっとした。先にゴールしていたクリスも出迎えてくれた。すぐ後に藤岡さんもゴールして、続いて9 時スタートのトップがゴールに向かってくる?クリスは6 時スタートの人だったの?本当の1 位でゴールに飛び込んできたのはなんとパオロ。パオロってこんなに強かったのか!と驚いた。
テントに戻ってから限界まで追い込んだ脚の痛みがひどくしばらくお休み。22 時ごろゴールゲートに行ってみ る。自分がゴールしてから3 時間経ったのでこの時点でゴールしている人が今日自分よりも上の順位に行く可能性のある人。6 時スタートで自分より速かったクリスの他に9 時スタートの人がここまでで何人ゴールしているかで決まる。20 人ちょっとゴールしていたがどの人が9 時スタートなのかわからないので「微妙なところかな あ」としかわからない。やりきった・・・と満足しつつ就寝。
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