アタカマ・クロッシング
2011/03/10(木)
Stage5 The Long March(73.6km、11:03'45、7位)
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オーバーナイト決戦の日。どのようにレースを運ぶかはその場のノリで・・・というか決めかねていた。 相変わらずバタバタと遅れ気味にパッキングをしたが今日は少しだけブリーフィングに参加できた。 しかしシューズをきちんと履こうとしたら重大なトラブルが発生。キャンプ地にいる間シューズのかかとを踏んで履いていたら アタカマ塩湖の塩のせいでかかとをつぶした形にシューズが固まってしまい履くことができない。そんなにがっつり踏んでいたわけではないのに・・・。 無理やりねじ込んでもかかとを負傷(皮膚がはがれている)しているところに シューズのかかとが当たって激痛が走る。そこで急いで岩瀬さんに余った水をもらいシューズを濡らして正しい形になるように 足で踏んで柔らかくしようと試みた。スタートまでに戻らなかったものの我慢すれば何とか履けるレベルになりレーススタート。
スタート直後からアンダースとマーティンが先頭をぶっちぎる。こちらは足が痛いけど「行けるところまで行っちゃえ」と2人についていく。 最初は真っ白い塩湖の上を走るがすぐにごつごつの塩の岩になりほとんど走れなくなる。少しするとシングルトラックのようなものが付いていて 細いラインではあるが何とか走れるようになる。マーティンを抜かしてアンダースと2人で先頭を走る。 なぜか昨日からキャンプ地でエサをねだっていた黒い犬が一緒にスタートしてついてきている。この犬は昨日のステージ4からコース上を選手についてきたらしい。 じりじりとアンダースに離されていくが彼は水を飲むときにゆっくりになるので決定的には離されない。
前方を大きな動物の群れが走っていくのが見えた。なんとも雄大な眺めだ。CP1までは15kmそこまで何とかアンダースを捕らえた状態で走ってみたい。 アタカマ・クロッシングの丸ワッペンが落ちているのを発見する。前を走っているのはアンダースのみ。ワッペンを拾って 「おおーい、落としたぞー」と日本語で叫びながらアンダースを追いかける。なんとかアンダースを捕まえて背中にワッペンをつける。 安全ピンが曲がっていてきちんと留められなくなっていた。追いついたついでに今度は自分が先頭を走る。 コマケンさんが撮影で張り付いていて前を走って行くのだが平均台のような細いシングルトラックを平然と走っている、 自分は走り方が悪いのか疲れて狙ったところに足を置けていないのか時々シングルトラックから脱線するので、 余分なダメージは受けるしスピードにも乗り切れない。このまま行くとちょっとまずいなーと思っていたらアンダースに抜かされて その後はどんどん差がついていくのみ。
CP1が近づいたときに後ろの選手が次々と追いついてきて後ろを振り返ると続々と来ていた。みんな今日に勝負かけてるな! 黒い犬は3位でCP1に到着。すごい!CP1からはここまで無理した分を回復させるためにレース初音楽を聞きながらスローペースで進む。 攻めすぎず早めにやめたから、たぶん回復してまた自分のペースでレースを進めれると思うけど・・・と考えていたが、 CP2への長い平らな直線で走ることができず「ちょっとやばいかも」という感じ。CP2で佐藤くんにも追いつかれてしまった。 CP2には近藤さんがスタッフでいて「もう一回くらいどこかのCPにいてくれるといいんですけどね」と話をする。 自分も佐藤くんも英語がほぼだめなので近藤さんがいると日本語で休憩ができるので気分転換になるのだ。
CP2からは佐藤くんと一緒に進む。途中でプチロストがあったが大事にはならず。すぐ後ろからきた選手と1つの集団になり一緒に進む。 CP3の手前で集団についていけなくなり1人旅になる。ここは速歩きで我慢する。回復したら一気にいけるように補給だけは気をつけて。 CP4手前で筋力が回復してきたのを感じた。コースは砂の大斜面に続いていて、良く見ると大斜面の上で佐藤くんが写真を撮っているのが見える。 大斜面を直登で一気に登る。まだ走り出さず超速歩きで進む。崖の上に出てそこから砂丘下り。下のほうにCP4が見えた。 ここから走り始めCP4で水だけ素早く補給。
CP4を出ると前に何人か選手が見える。見えている中の先頭が佐藤くんだと思う。脚もすっかり戻ったのでペースを上げて走る。 あっという間に見えている選手を抜き去る。佐藤くんが振り返って「なんだ元気じゃんかよー」と言っているのを一気に抜かす。 ここからベスパ・ハイパーもつぎ込んで押せ押せで。かつて川の流れた跡のような地形をたどってCP5に到着。 佐藤くん達を抜かしてからもかなりいいペースで走っているのに、その前の選手がまったく見えてこない。 CPスタッフがペットボトルに水を注ぐのにもたもたしていて「1区間でどのくらい水を飲んでいるか?」「もっと飲んだほうがいい」 「これを飲んでいけ」など質問ばかりしてくるので「早くしてくれー!!」と日本語で言い奪い取るようにペットボトルを取って出発。 リズムがいいときは水を差さずに一気に行きたいのだ。
走ってもまったく前が見えてこないので少々テンション下がる。しかし長い直線ではるか前方に人影を2人発見。それを励みにがんばり少しずつ距離を詰めていく。 しかし捕らえた!と思ったら取材スタッフの伊場さんだった。がっかり・・・。ここから平坦な走りやすい道にも関わらず歩きになってしまう。 前を捕まえたいという気持ちが強すぎてオーバーペースだったか。歩き始めは速歩きだったが、だんだんふらふら歩きになってきてしまった。 伊場さんがかなり長い間カメラを回しながらすぐ隣を歩いているが、ここからは集中して気力だけで押し切ることになるので、 伊場さんに「1人にしてもらえませんか」とお願いし、伊場さんの仕事がなくならないように「すぐに佐藤くんが来ますから」と身代わりを提供(笑)
「そろそろCP6だよね」と祈る気持ちになってきたころ、後ろを振り返るとすぐ後ろに選手が1人迫っていた。そしてCP6で一緒になる。 同じテントのイアンだった。たぶん初日以外は自分の前を走っている実力者でテントの角の常連だ。「お互いがんばろうぜ」的な合図を交わし イアンは前へ出て行く。最後の1区間は約10km。CP6を出るとすぐに月の谷の入口があり大砂丘が見える。 コースレイアウトはたぶん登って下って登ってゴールという感じ(最後の登ってはなかった)。 月の谷に入っていく登りではイアンにかなり先行を許してしまったが自分もまだあきらめたくはない。最後のベスパ・ハイパーを投入して 最後の一撃にかけるつもり。イアンも自分も速歩きの状態だが、自分は一時のふらふら歩きからは復活してきたので 登り傾斜が緩くなったところでときどき小走りを入れてイアンとの差を詰めていく。
道を外れて砂地に入ったところでようやく射程圏内か?と思える距離まで戻すことができた。イアンも時々こちらを振り返っているが この差をどう見ているのか?走らないと追いつくことはできないが、最後の一走りくらいの力は残っているので この後来る月の谷の下りで勝負をかける作戦にする。抜かすときは力の差を見せ付けるように(実際の差はないけどお芝居で) 一気に抜かして視界から消えるようにする。それでイアンにあきらめの気持ちが出れば自分の勝ちという作戦だ。
しかしこの作戦は崩れ去る。イアンの前に待望のもう一つ前の選手(マチアス)が見えてきた。こうなるとイアンだけを見てレースするわけにもいかず あわよくば2人とも倒したい。そこでもう小細工を考えるのはやめて堂々と2人に追いついてしまうことにした。 後は余力がより残っている者が勝つだけだ。短い平坦な場所を走って月の谷の最上部の砂の登りに取り付く。 前の2人も振り返って自分の姿を確認した。下り始めたところで3人が1つの集団になりそれぞれ握手をする。
そこからスパート開始。前年の大会の情報でオーバーナイトの最後はクライミング的激登りと聞いていたが下りで最後の力を振り絞って差をつけるつもりで攻める。 写真を撮りたい景色だったが、もちろんそんな余裕はなく振り返るのも怖くてできない。前を見て全力で走るのみ。 月の谷の岩壁の間を縫うようにコースが走り足元は砂地。下っていくと観光客が散策している。観光している脇を全力で走るのは申し訳なかったが 事情が事情なだけに(笑)走り抜ける。だいぶ下ったところで「どうだ?」と思い、後ろをちらっと見るとイアンがついて来ちゃってます。 その後ろは見えずマチアスは千切った。
月の谷を出て舗装道路へ。ちょこっとあった登りでイアンの気配が離れたのがわかる。「イアンの登りは終わったな」と思う。 しかし地形的に平坦になり舗装道路は緩い下り。最後の登りってどこにあるんだ?と思いながら走る。こちらも走るのはそろそろ限界。 もうだめだと思って歩きに切り替え振り返るとイアンが来ちゃいました。下りで千切れなかった時点で負けだと思い、もうイアンに先を譲ろうと思ったら イアンも自分に並んで歩き始めました。足を引きずっていてかなり痛そうです。どうやらイアンも限界のようで2人で並んで速歩き。 少しするとゴールが見えてきました。最後の登りないじゃん!
ゴール目前で「イアン先に行ってよし」とペースを落とすとイアンもペースを落とします。 「なら一緒に行きますか」と(言葉は交わしていないが)手をつないで一緒にゴール。順位も7位と超満足。 先にゴールしていたダレンが「サムライさーん」と抱きついてきました。ダレンはこのオーバーナイトステージを1位でゴールしたようです。 アンダースじゃなかったんだ。上位陣は本当に接戦のようでした。ダレンはゴールしてくる選手を1人1人出迎えている、すごい。 イアンはしばらくうつむいて泣いているように見えました。
驚いたのはしばらくして佐藤くんがやってきたこと。けっこう無理している感じ(前日とかトータルで)だったので、 もっと遅れると思っていたが素晴らしい成績。さらにしばらくして荒井くんも明るいうちにゴール。初砂漠レースで大健闘です。 第一の目標は「とにかく完走」だったが、残りは距離の短い最終日だけだから完走はもう大丈夫だし、総合成績も確実に1桁入ったでしょと思ったので すっかり緊張感からも解放されました。ご飯もうまい!満足感に浸りつつ就寝。 しかしまだ走っている人はいるし運営スタッフや取材スタッフは徹夜仕事なのだ。
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