サハラ・レース 2009/10/26(月) Stage2 Marathon el Qarawin(44.0km、リタイア)
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Stage1 Arabian Nightへ
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Stage3 The Roman Ruinへ
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スタートの準備をしていると雨が降ってきた。天気は良くて陽は差しているので一時的なものではあるが雨が降るということは湿度が高いということ。灼熱の砂漠で湿度があるとますます過酷な暑さになることが予想される。いまいち食欲がなく朝食をしっかり食べることができなかったが、無理に食べなくても走りながら補給すれば問題ないだろうとピーナッツホイップのチューブを用意。7 時半からブリーフィングがあり8 時にスタート。
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スタート直後からピーナッツホイップをなめながら進む。しかしどうも調子が良くない。ピーナッツホイップをなめ、スポーツドリンクで流しこみながら調子が上がってくるのを待つことにする。スローペースで進んでいると後ろから佐藤くんの鈴の音が近づいてきた。振り返らずに手を上げる。「調子悪いんですか?」「ちょっと気持ち悪くて・・・」と話し佐藤くんを見送る。続いて藤岡さん登場。「あれっ?」とか言われつつ抜かされていく。
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調子が上がるどころかますます気持ちが悪くなって歩き始める。さらにしばらく経つと宍戸さんにも追いつかれた。「どうした?」と聞かれ「胃が気持ち悪くて走れない」と言うと薬(H2ブロッカー)をくれた。荷物を下ろし座り込んで薬を飲む。さらに後ろから韓国のユーさんがやってきた。「胃が気持ち悪くて・・・」と説明するとレースを中断して様子を見てくれるユーさん。薬のようなものを渡され飲むように言われ水で流しこもうとするが気持ち悪くて飲み込めない。。「がんばれ!吐くな!」と励まされながらなんとか半分くらい飲み込む。手のひらがむくんで腫れたようになっているので「脱水症状だ」という。水を少しずつ飲みながらユーさんに治療してもらう。血液の循環を良くするために手のひらをぐりぐりとマッサージされる。痛みを感じるうちはダメな状態らしい。
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治療をしているところに次々と通りかかる日本人選手が心配そうに立ち寄ってくれる。宍戸さんが「みんなは先に行って」と言いみんなを先に行かせる。この過酷な環境では自分のペースを崩したり、日差しにさらされているだけで体力をどんどん消耗してしまう。誰1 人余裕のある人はいない。
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続いて針を取り出しアルコールジェルで消毒を始めるユーさん。手に針を刺して少し血を抜くらしい(これも血液の循環を良くするため)。「やめてくれ〜!」と思ったが、まともに動けない状態ではそんなことも言っていられないので素直にされるがまま。親指を縛られ爪の付け根あたりに針を刺される。顔を背け刺されるところは見ないようにして歯を食いしばって耐える。左右3 か所ずつ刺されたあと手のひらをぐりぐりされているとだんだん痛みが引いてきた。しばらくして完全に痛みがなくなったところで、ユーさんはレースを再開して先へ。自分も宍戸さんと一緒にCP1 に向けてスタート。自分の水は治療中に使いきってしまったので宍戸さんが水を分けてくれCP1 まで付き添ってくれる。後ろを見ると最後尾(スイーパー)のラクダが見えてきていた。
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CP1 に到着するとまだゆっくりグループの日本人選手が何人かいて、加納くんに通訳してもらいドクターに「胃が気持ち悪く水は飲んでいるけどあまり吸収していない感じ」と伝える。“吸収しない状態”を解消するために気持ち悪くなってきてからはスポーツドリンクを意識して飲むようにしていたのだが、そのスポーツドリンクが濃かったために、ますます“吸収されない”状態になってしまっているとドクターが判断。「水をたくさん飲んで尿が出たら出発してよし」と指示をもらう。出発していく日本人選手を見送る。最後尾のラクダもすでにCP1
に到着、すなわち自分が最後尾。水を飲みながらしばらくしてやっと尿をすることができ、胃の気持ち悪さも良くなったのでドクターに出発することを伝える。
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少し走れるようになったので楽に走れるところはゆっくり走って前の選手を追う。今日はもう順位やタイムがどうとか言える状態ではないが、1 人旅はきついので早めに日本人選手の誰かに追いついておきたい。CP2 への中間地点くらいで宍戸さんと高橋くんに追いつく。彼らと一緒に歩いてCP2 に向かおうとする・・・がなぜかま
たしてもパワーダウン。2 人の歩きについていけない。どんどん離れて行ってしまいまた1 人旅になる。なんとか歩き続けるが、このペースではいつになったらCP2 に着くんだろうというくらい遅い歩み。
自力で到着できるかすら危ない状態になりつつあった。なんとかしようとエネルギー補給のためドライフルーツの袋を開けようとしたら勢いあまって爆発し砂漠にドライフルーツが飛び散ってしまった。このドライフルーツはケーキの材料でいろんな種類を細かく切ってあるものなので拾い集めるのは不可能。ドライフルーツはあきらめオレンジのグミを食べながら前進する。
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無事にCP2 に到着できたら近藤さんがスタッフでいるはずなのでリタイアの相談をしようと思いながら歩いて
いるとスタッフの車が走ってきた。ドクターが車から降りて来て車の後部座席をポンポンとたたき「乗りなさい」と言う。もう「自分で歩く」と言えるような状態ではなく、どこかほっとして車に乗り込む。CP2 に搬送されながら日本人選手が歩いているのが見えたので車の窓を開けて「がんばれー!!」と叫ぶ。CP2 にはあっという間に到着。CP2 で補給・休憩している日本人選手にリタイアしたことを言う。宍戸さんが「様子を見ていて、これ以上続けると死ぬと思ったからドクターに迎えに行ってと頼んだ」と言った。救急の仕事をしていて人の生死をいつも見ている宍戸さんが「死ぬかもしれない」と判断したなら間違いないと納得。
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CP2 を出発する日本人選手と写真を撮り「必ず完走してください」と激励する。CP2 ではなぜかユーさんがお
昼寝?していて、いつ出発するんだろうと思っていたら15 時半ごろ出発していった。中間点のCP2 を15 時半
に出発したら到着は夜遅くになるのではないか?と思ったが順位狙いでない場合は最も暑い時間帯には動かず
に完歩を狙うというやりかたもありなんだろう。というかユーさんは砂漠経験豊富なアスリートで今回はゆっくりランナーのサポートで参加されているようだったのであえて最後尾からスタートしているのかもしれなかっ
た。(実はユーさんも体調を崩してリタイア寸前という状態でCP2 で回復待ちをしていたそうである)
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車で今日のゴール(キャンプサイト)に搬送される。途中で一緒に車で搬送されていた選手のうちの1 人の女性選手がスタッフに話しかけ車は停止。何を話しているのかわからないが「やっぱりリタイアをするのをやめてレースを続けたいからCP2 に戻してくれ」とお願いしたようだ。もう夕方になっていたが車はCP2 に戻り女性選
手を下ろす。自分もCP2 まで自力で行っていれば再スタートできたのかなあと思った。再び車は今日のキャン
プ地に向かって走り出す。きれいな砂丘が連なっているのが見え、その上を選手たちが進んでいるのが見える。「あんなところを走れたら素晴らしいだろうなあ」と寂しさを感じる。
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キャンプ地に到着すると藤岡さん、佐藤くんを見つけたのでリタイアしたことを伝える。ゴールしてくる選手たちが輝いて見えくやしく情けない。このレースはリタイアしてもランキング外で次の日から走ることができる。しかし順位も完走も関係なくなってしまった状態で苦しいレースを続ける自信はない。走らないことを選ぶ場合は翌日からスタッフと行動を共にすることもできる。テントに戻りリタイアしてしまったことを言うと他にもリタイアになった人がいて「明日は走らないつもりだが君は走るのか?」と聞かれた。「考え中です」と答えたかったが、なんと言えばいいのかわからなかったので「Yes(走ります)」と答えてしまった(笑)
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夕食にしているときに、久米さん、パオロと一緒になった。久米さんに通訳してもらってパオロにリタイアしてしまったことを言うと、とても驚いた表情をしていた。パオロもスポーツドリンクを使う場合はうんと薄めて使ったほうがいいと言っていた。今回自分は500ml のペットボトル2 本で片方を水、片方をスポーツドリンクに
して交互に飲むことでバランスを取っていたつもりだが、今日はきちんと吸収していかないのはナトリウム不足になっているからだと判断してスポーツドリンクを集中的に飲んだためにかえってよくなかったようだ。もっともそれ以前にレース序盤でおかしくなったのできっかけはレース中の補給の問題ではない。何が起きたのかわからなかった。近藤さんも夕食に来て「明日走るなら朝言ってくれればいいから」と言うので、その場で「走ります」と言う。「明日は体の様子見ながらゆっくり楽しんで行きなよ」とみんなに言われた。
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