7/2(土)ステージ6 Final Steps to the Buddhist Village

20110702_1.jpg夜中、風の音で目が覚めた。「なんか風が強くなったな」と思っていると、あっという間に砂嵐になった。テントは日中の暑さのため入口も窓も全開。入口を閉めるためテントの外に飛び出す。テントの入口の布を屋根のほうにまくって安全ピンで留めてしまったため手間がかかる。さらに砂が舞い上がって少ししか目を開けていられないため作業も時間がかかる。入口の布を落としてから窓を塞ぎにテントの横へ回り込む。窓になっている布を縛ってある紐を解いて完了。テントの中へ戻り内側から入口の布を紐で縛っていると外に飛び出していたテントメイトが隙間から飛び込んできた(笑)すべての入口と窓を塞いでも強風が吹き込んできてテントの中まで砂嵐。現地人のキャンプ設営スタッフ達も大騒ぎでテント周辺に集まってきて杭を打ち込んでいる音がしている。地面にしっかり固定しないとテントが飛ばされてしまいそうだ。自分たちでできることがなくなったので寝ようとするが砂埃で口や喉がからからですごい不快感。時計を見ると深夜1時を回ったところ。なかなか寝付けず長い夜になった。

朝起きると何もかもが砂まみれ。せっかく昨日はシャツを洗ったりして少しでも爽やかな最終日を迎えようとしたのに、すべてが台無しになっていた。今回のレース期間の中で最も汚れている。いや今までの砂漠レースすべての中で最も汚れていると思う。みんな砂を少しでも落とそうとウェアやザックを叩いているが、ちょっと払ったくらいではどうにもならないくらいになっている。テントの入口に並んだシューズはもはやただのゴミにしか見えなかった。小野さんが「すごかったですね!」と嬉しそうな顔をしてやってきた。小野さんは何があっても楽しそう。ありえないトラブルが起こるから楽しい砂漠レース。すべてを受け入れるしかない。砂嵐のおかげでテントの周りにさらさらの砂が積もったのでお土産の砂を採取しなおす。

20110702_2.jpg今日は上位36人は9時30分スタート、それ以外の人は8時30分スタートだ。そのため上位にいる自分と小野さんは朝はゆっくりできる。先にスタートする日本人メンバーと写真を撮ってスタートを見送る。それから自分の最終日の準備。少し残った食料も捨ててしまう。今日のコースは14km。どんな風に走ろうか?と考えた。前後の順位の選手は30分ほど離れているため、もう順位の変動はない。のんびり走ってもいいかなとも思うがやっぱり全力で行こうと決める。「1時間先にスタートした日本人選手全員に追いつけないだろうか?」と思いつき目標決定。スタートラインでパオロと写真を撮ってもらいスタート!

20110702_3.jpg最初から先頭集団で飛び出す。前を行くのは1位のデーモンとジミー。3番手を走っていると韓国のホンが隣に出てきた。コースは登りになる。デーモン、ジミー、ホンに遅れる。やっぱり上位陣は強い。しかしその後の下りと平地で再び追いつき少し急な登りでデーモンとジミーを抜かす。先頭がホンで自分は2番手。登りで差をつけられたが、登りきってコースが道を外れて左に曲がるところでホンは道を走ってまっすぐ行ってしまった。声が届くくらいの差であれば大声を出して知らせるのだが自分が登りきったときにはホンの姿は見えず。少しだけ「ラッキー♪」と思う。もしかしたら1位ゴールも不可能ではないかもしれないぞ。岩の隙間のような場所を下っていく1時間前にスタートした選手の最後尾に追いついた。スピードに乗って爆走。少しするとフラッグを見かけないことに気がついた。足元を見ると割と固い地面で自分の足跡もほとんど残っていないが・・・。しかしかすかにではあるが足跡はつくので地面をよく見る。自分以外の足跡がない!自分の前を100人ほど進んでいるのに足跡がないなんてありえない。急いで元来たコースを登り返す。途中で分岐があった!5分ほどロスしたか。正規のコースに復帰すると、また1時間前スタートの最後尾を抜かす(笑)はるか前方をホンがすごい勢いで走っていくのが見える。今自分は何番手くらいなんだろう?

20110702_4.jpg1時間前スタートの選手を次々と抜かしていくと、美絵さんと長谷川さんに追いついた。「先に何人くらい行ってます?」と聞くと「7人くらい?」とのこと。やっぱりだいぶ行かれちゃったなー。何番でもやることは全力で走るだけなので加速していくと後ろから「行けー!日本の誇りー!」と声が飛ぶ。普段なら恥ずかしいけど砂漠レースならそういうのもありだなーと嬉しく思う。ホンはすっかり姿が見えなくなってしまい追いつくのは先スタートの選手ばかり。ユーさんがいたので「ミスコースしちゃいましたー」と声をかけて抜かしていく。崖のような場所に出たが、そのままの勢いで崖にダイブ。スキーのショートターンのようにシューズのエッジでブレーキをかけながら駆け下る。反対側の登りに取り付いて振り返ると後ろから突入した選手が滑落しているのが見えた。

20110702_5.jpgコースは緩やかな登りが続き、順位が決まっていること、前後に上位の選手が見当たらないことから若干ペース落ち気味。時々抜かす下位の選手と声を掛け合いながら走っていく。そろそろ成宮さん、栗原くんあたりに追いつかないかなーと思うが日本人選手には追いつかない。さすがに14kmで1時間差は厳しいか。最後にがつっと登った後ゴールに向かって下り。スタッフに「あと2km」と声を掛けられる。下りを爆走していると成宮さん発見。さらに下って岩の角を曲がるとラクダが!(野良ではない)崖の隙間でコースが狭いので刺激して蹴られたりしないようにそっと横を通り抜ける。崖の隙間を抜けるとなにやら建物が見える。ゴールだ!舗装路に出る手前で鈴木くんを抜かす。少し舗装路を走り建物が立ち並んでいる敷地に入る。そしてゴール。ずっしり重い完走メダルをかけてもらう。ゴビ完走も嬉しいが、ついに南極レースへの扉が開かれた!栗原くんが「おめでとうございます!」と出迎えてくれた。この場所は火焔山というところで西遊記の舞台でもある。孫悟空の像があり、この場所は中国西部の砂漠地帯でも特に暑い地域らしく案内看板に「中国最熱的地方」と書かれている。

20110702_6.jpgいつものようにゴールには飲み物・食べ物がたくさん。ジュースがうまい!(笑)しかし今回お腹の調子はいまいちなのか固形物に対する食欲がなくフルーツばかり食べる。ゴールまであと少しのところに座って飲み食いしながらみんなのゴールを待つ。みんなのゴールシーンは心温まる雰囲気。この雰囲気をいかに伝えるかというのは難しいというか不可能な気がする。これを感じたければここに来るしかないんだろうな。今日は上位でゴールしたジミーがぐったり横になっていた。握手して写真を撮ってもらったがジミーはかなり具合悪そう。この後ジミーはバスで帰らずスタッフの車に収容されたようだが・・・ジミー速いのにデリケート過ぎるぞ・・・。アリがゴールにやってきたので小野さんと一緒にゴールゲートへアリを迎えに行く。アリは奥さん娘さんに出迎えてもらってとても嬉しそう。アリは次は南極レースに挑戦する予定。南極で再会できるといいな。それからさらにだいぶ時間がたって美絵さん、長谷川さんが一緒にゴールへやってくる。2人で日の丸が書かれた扇子を掲げてゴール!すばらしい演出、やりますなー。

20110702_7.jpg最後に日本人選手みんなでゴールゲートで写真を撮る。全員完走だからこその嬉しさがはじけ飛んでいる写真が撮れた。13時にバスが出るとのこと。ここから3~4時間のバスの旅。シューズのインソール、ゲーターは持ちかえっても捨てるだけなのでゴール地点のゴミ袋に捨ててしまった。シューズもホテルに帰ったら捨てる予定。バスに乗り込むとけっこうクーラーが効いていて快適。タンさんがいたので「どうでした?」と聞くと、指を喉に当ててシュッと横へ切る仕草。ロングステージでリタイアしてしまったようだ。バスが動き出すとタンさんは少し具合が悪いらしく座席から立ち上がりバスの通路へ横になる。そんなところに寝たらますます気持ちが悪くなんじゃないかと思った。

20110702_8.jpgバスはきれいに舗装された道路を通り途中トイレ休憩が1回。少しうとうと眠ったり、ぼーっと外の景色を眺めたりしながら過ごす。レースを回想するとかでもなく、とにかくぼーっと。ウルムチの街に入ると巨大な広告看板があったりショッピングモールがあったり一気に文明に帰ってきた気分になる。ホテルに戻ったらシャワー浴びておいしいものをたくさん食べようとわくわくしてくる。見覚えのある街並みになってバスはホテルに到着。無事にここに帰ってこれてよかった。バスから次々と砂埃だらけの競技者が降りて来てホテルの中へ。毎回レース後にホテルに帰ってくると「こんなどろどろで(現地では)一流のホテルに入って行っていいのか」と思ってしまう。

レース後の部屋も小野さんと一緒。小野さんはシャワー前にネットで完走の報告をしたいそうなので先にシャワーを使わせてもらう。自分がシャワーを浴びる前に装備をザックから出して、装備にシャワーを浴びせる。とにかくある程度でも砂を落とさないと帰る準備ができない。シャワーで流した装備をバスタオルの上に並べてから自分がシャワーを浴びる。体を洗ったタオルが真っ茶色になっている(笑)おそらく1週間砂漠でレースしたからではなく、この汚れのほとんどは昨夜の砂嵐のせいだと思う。パーティの時間までは2時間程度。外に出るほどの時間もないし、部屋で明日の帰国の準備をしてベッドに寝転がる。少しお腹が空いたのでホテルまでは持って来たけれど砂漠には持っていかなかった食料の残りを食べていると小野さんに「よくそんなの食べれますね」と笑われた。

19時にパーティ会場へ。栗原くんは今日の飛行機で帰ったとか!あわただしいなー。スクリーンを見やすいいいテーブルを日本人選手分の椅子と共に確保。しかし他の日本人選手こないぞー。会場内のテーブルがだいたい埋まり席を確保できていない海外選手が空席っぽく見える日本人席のまわりをうろうろ。まだ来ていない人の席をキープしておくことが困難になり日本人席少し縮小。少ししてみんな揃ったので椅子が足りない分だけ別の場所から持ってきて日本人席を作った。長谷川さんは具合が悪く部屋で寝ているようだ。今回のレースではテントやバスで長谷川さんとご一緒して話をする機会が多かっただけにパーティで乾杯できないのは残念すぎる。しばらく食事して(でもやっぱりここのホテルの食事は悪くはないけど個人的にいまいちかなー)それから表彰式。優勝のデーモンはぶっちぎりの強さだったが、普通の服装で見ると・・・「普通のおっさんだよね」と小野さんと話していました。パオロ先生は3位。パオロが優勝した2009年エジプトではちょこちょこ一緒に走る場面もあったのだが今回は影すら踏めず。それから大会オフィシャルカメラマンが撮影した写真スライドショーを見た。会場で韓国の人がテグの世界陸上の応援メッセージ?を募集していました。

自分は次に砂漠レースに来るのは1年半後の南極で、しばらくこういう場に来ないので「サマンサと写真撮ってもらおう」と思いサマンサを探す。サマンサを見つけたが何人かの選手と難しそうな顔をして何か話している。競技上のクレームか何かあったのだろうか。しばらく様子を見たがいつまでも何か話し合っているのであきらめ。話が終わるとサマンサはどこかに行ってしまった。鈴木くんがタイミングチップを返却できていなかったので、アリーナが回収していたことを伝え一緒にアリーナのところへ。アリーナとも写真撮ってもらおうと思いアリーナと写真撮影。アリーナに「次はいつ会える」と聞かれたので「来年、南極!」と宣言しておいた。アリーナの反応からすると南極の出場枠はまだ空いている感じだ。よしよし・・・帰ったらすぐエントリーするぞ。

パーティ会場を出て、日本人選手でホテルの喫茶店でささやかに打ち上げ。なんと今日の飛行機で帰ったはずの栗原くんが戻ってきていた。途中でタクシーが故障して飛行機に間に合わなかったんだそうな・・・。小野さんが長谷川さんに電話したがまだ具合が悪いらしい。美絵さんは明日1日ウルムチ観光するので「地球の歩き方」を貸してほしいとのことで「地球の歩き方」を渡しておく。その他のメンバーは明日帰国するようだ。朝は自分、小野さん、栗原くんが一緒に出発する予定。部屋に帰ってから寝る前に小野さんが大会HPを見ていたので「デーモンって何歳なんだろうね」と選手リストを見ると37歳!?あの風貌で同じ歳かーと衝撃を受けた。なぜか今回はのんびり想いにふけることもなくどたばたと時間が過ぎて行く。楽しさはいつもと変わらずだけど。

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