朝が近づくにつれて急激に寒さを感じるようになった。体は滅多なことでは寒いとは感じないが、手足、顔がきつい。この寒さは何?と思って温度計を見るとマイナス37度で今回のレース中一番の冷え。まだ夜明けまで時間があるのでもう少し下がるかもしれない。顔は風を受けないように下向き、地面についた先を行く選手の足跡と車のタイヤ跡を追う、ときどき顔を上げて進行方向を確認。手はオーバーグローブの内側で汗が凍って氷ができている(ビニール手袋節約でベイパーバリアしていないので)。アウター(DASパーカー)のポケットに手を突っ込んで歩くとましな感じになった。足の冷えは今回のレース初のオーバーシューズ。効果を確かめる意味と、ソックス2重履きやベイパーバリアをするには一度シューズを脱がなければならず面倒。ついでにメインで着用しているバラクラバは湿って(凍って)いるので新しいバラクラバを着ける。なんとか進み続けるがペースは上がらないしリスクも高いので、つい目はビバークできる場所を探してしまう。シュラフに退避したい気持ちが強くなる。しかし制限時間に対して余裕があるわけではないし、カリブークリークでしっかり寝てきたので、ここで停滞するわけにもいかない。明るくなれば気持ちも上向いてくると信じて前進あるのみ。
明るくなったらやっぱり体がよく動くようになってきた。明け方は強く朝を待ち望んでいたためか、朝焼けがとてもきれいに感じた。GPSを確認するとスローペースながら動き続けたのは意味があって思ったよりも前進していた。もともとこの区間の距離は短いからというのもあるけれど。ピンチを脱して足取りも軽くなって進んでいくと空港があった。空港があるのはイヌビックについた証拠。大きな三叉路は空港、イヌビック、デンプスターハイウェイの分岐で来た方向に向かって矢印でデンプスターハイウェイと書かれているのが、ようやくデンプスターハイウェイの終点まで来たんだなという実感を与えてくれる。
あとは最後のアイスロードだけだともう到着した気分になってしまう。少し休憩することにしてソリに腰掛けてのんびり食事。天気もいいし直射日光は暖かいし(気温はマイナス20度ほどだが)、看板や何かの施設(アンテナとか立っている)がイヌビックに着いたという安心感が出てくる。暖かいし、もうすぐだからとアウターを脱いで身軽になる。ところが歩き始めたら体が冷えてきた。寒い。まだか?と思いながら進むが実はイヌビックの市街地はまだまだ先っぽい。けっきょく我慢できなくなって再びアウターを着る。さらに疲労を感じてきてバテバテ。予期せず最後の最後で苦しむことになってしまった。CPが近づくとやっぱり大会スタッフの車がいて誘導された。CPはArctic Chaletsというコテージがたくさんある施設で部屋を割り当てられシャワーとベッドが使えるという場所だった。イヌビック到着14時20分。予定に対して3時間55分遅れ。
コメント