立山黒部アルペンルート(一般の部)
2011/08/17(水)〜19(金)
■8/17(水)
剱岳へ2泊3日で出かけた。今回の同行者はPiece of earthの土生さん・木川さん。このパーティで剱岳に来るきっかけは 映画の「岳」をみんなで見に行ったときに、映画の「剱岳」の話にもなり「剱岳に行こう!」となったのだった。 4時10分ごろ自宅を出発。首都高・中央道とも渋滞もなく6時50分に松本駅アルプス口に到着した。 松本近辺は今年の3月まで勤務していた会社に在籍していた約10年間を過ごした場所。遠くに出かけるというよりもちょっと帰省という感覚に近い。 ここで7時に、前日に松本まで来ていた土生さん、実家から直接来た木川さんをピックアップ。
自分はTJARのためのビバーク経験を積む場にもしているためツェルト泊でシュラフはなし。多少は自炊もおこなうことにしている。 しかし家にあったガスカートリッジは残りが少なかったため足りるか微妙。車の中でお湯をどのくらい使うか聞くと 木川さんはかなりお湯を使うことをあてにした食品を持ってきているようだったためガスの予備を買っていくことにする。 2人はアルプスビギナーなので山小屋泊。今回はペースも標準コースタイムでスケジュールを組んでいるため 今回の登山を勝手に「一般の部」と呼んでいる。いつもの長時間かつ速い移動は「変態の部」あるいは「アドベンチャーの部」だ。 穂高駅前のバックカントリーというアウトドアショップに立ち寄る。このお店は朝早くから行動する登山者のために 午前4時から店を開けるという素晴らしいお店だ。無事にガスを購入することができた。
マクドナルドとコンビニに寄って朝食と追加で購入しておきたいものを買って扇沢へ。 扇沢の駐車場は混雑はしていたが駐車場の係りの人の誘導ですぐに車を停めることができた。 車から降りて荷物の準備を始めると雨。荷物の準備をしている間だけ降って立山黒部アルペンルートの切符を買いに行ったときにはやんだ。 しかし今日は少し天気が悪そうで心配。一般の人と同じように扇沢から室堂までの片道切符を5700円で購入。やはり高いな。
最初はトロリーバス。乗り込んだときは暑く感じて窓を開けたのだがトロリーバスがトンネルの奥深くへ進むと寒くなってきて窓を閉める。 トンネルはずっと登りでトロリーバスはけっこう勢い良く走っていく。15分ほどかかって黒部ダムへ到着。 ダムの展望台へ行くとダムから放水もされていて良く見る黒部観光の写真の風景だった。 雨は降っていなかったが曇り空なのが少し残念。黒部ダムをしばらく眺めてからケーブルカーの駅へ。 ここから大観峰というロープウェイ乗り場へ行く。すぐに乗れるかなと思っていたら30分ほど待たされてしまった。 ケーブルカーで大観峰へ12時半ごろ到着。ここまでけっこうのんびりしてしまい剱沢小屋に夕方到着できるのだろうかと心配になってくる。
ロープウェイから再びトロリーバスに乗り継いでようやく室堂到着。お腹が空いていたのでレストランで食事。 室堂にいる人は普通の観光客が多く登山装備の自分達のほうが浮いてしまっている。 昼食を済ませて14時ちょっと前に出発。雷鳥沢までは室堂の遊歩道を歩く観光客も多かったので混雑している。 剱御前に向かう登山道に入ると人はほとんどいなくなる。おそらく登山者のほとんどは14時も過ぎれば目的地についていて 14時過ぎから登山道に入る自分達は少数派に入るだろう。
今回は標準タイムを目安にして歩くことにしている。自分にとってはかなり楽勝ペースのはずだが 富士登山駅伝と先日の南アルプスの影響があるのか足が重たく疲れている。途中から木川さんと土生さんが前に出て 自分が最後尾を歩いたが「なんか速くない?」と感じるほどだった。2人は標高が上がって寒くなったのと 山小屋に早く到着したいと思っていたことからペースがあがったようだ。
剱御前小屋を越えて剱沢へ下り16時半ごろ剱沢小屋へ到着。土生さん・木川さんは小屋へ。自分はテント場の受付をして 先にテントの設営をおこなう。野営の準備をしてから小屋に行く。 小屋の人によると明日は天気が悪くなるため、明後日までいるなら剱岳に上るのは明後日にしたほうがよいとのこと。 少し相談して明日は朝6時に小屋集合(ただし6時に自分が小屋に着かなかった場合は、土生さん・木川さんがテント場に上がる)として それから行くかやめるか、そのときの天気で決めることにした。
夜は小屋の人が言ったとおり大荒れの天気。しかしドームツェルトはしっかり持ちこたえてくれている。 使っているツェルトは生地が空気を通さないためベンチレーターを閉じることができない作りになっている。 そのため完全に風下に出入り口が向くように設営すると反対側の通気口から雨が吹き込んでしまうため 風がツェルトの側面に当たるように設営した。風はまともに受けてしまうことになるため心配はあるが雨が吹き込んでこない。 夜中は2〜3時間に1回目を覚ます感じで雷で目を覚ましたこともあった。 深夜過ぎには足が寒くなったが足先にレインウェアを巻きつけたら快適に朝まで熟睡することができた。
■8/18(木)
5時半ごろ動き始める。6時に小屋に降りて行こうとしたが少し間に合わず、6時ちょうどに2人がテント場に上がってきた。 昨夜の暴風雨は小屋にいても怖いくらいで、ツェルトは間違いなく潰れていると思って心配になり、すぐに様子を見に来たということだった。 実際はツェルトは意外と丈夫で中にいてもなんともなかった。ここで今日剱岳に登るかどうか判断することにしていたが 2人ともやる気満々な感じでレインウェアを着こんでいて、しかも今は雲はどんより厚いものの雨は降っていないので 「じゃあ、行きますか!」と出発することにする。
出発して雪渓を横断し剱岳方面に向かう。剣山荘を通過して本格的な登りへ。一服剱の手前で前方の雲が薄くなり 前剱から西に延びる尾根が見える。崖が切り立っていてすごい景色。これから難所の連続が来るだろうなと予感させるものだった。 ここからは崖のような登り下りを繰り返し距離は全然進まない。途中で前剱で折り返してきたという登山者に会った。 風が強くて身の危険を感じたのでやめたそうだ。登山シーズンのこの時期は剱岳は渋滞すると聞いているが 今日は悪天候のためほとんど登山者に出会わない。登山道は尾根の東側を巻いていることが多く、西風なので意外と強風による怖さ寒さは感じなかったが ときどき完全な稜線に出るとバランスを崩すほどの風が吹いている。
いよいよ「カニの縦ばい」へ。はっきり言って「すごいところと言ってもそれほどでもないんだろう」と舐めていました・・・ が、けっこう容赦ない崖だった!先に崖に取り付いている登山の一隊はハーネスつけてビレイを取って登っています。 「カラビナとスリングくらい持ってくれば良かったかな」と思ったが、登ってみたら意外とホールドがしっかりしていて安心して登れる。 見た目はすごかったけど(そして落ちたら死ぬけど)慎重に行けば大丈夫。
そこから相変わらず雲で真っ白な中を登るとあっさり剱岳山頂へ到着。周辺はまったく見えないが、とりあえず登った満足感だけ。 晴れれば日本海と富山の街並みがすぐ近くに見えるという他の山とはちょっと違う風景が見れたはずなのでとても残念。 山頂には神社?があり賽銭箱もあったので賽銭を入れて「南極に行けますよーに!」とお参りする。 携帯の電波が入ったのでツイッターで無事に山頂に着いたことを書きこんだり、3人で写真を撮ったりしてしばらくゆっくりした。 風がそんなにひどくなくて良かった。
剱岳からの下山は登山道の踏み跡が分かりにくくときどきメインの登山道を外れて歩いて合流ということが何度か・・・。 基本的には尾根を南へ向かえば良いだけなので安全と判断できれば問題なし。 現在地がよくわからなくなりかけたころ登山道と下山道が分岐しているところまで戻ってきた。 「カニの縦ばい」は登り専用、「カニの横ばい」は下り専用になっているのだ。
「カニの横ばい」を覗き込むと容赦なくやばい。「カニの縦ばい」どころじゃなくやばい。一歩目を踏み出し足先でホールドを探すものの足をかけれる場所が見つからない。 しかも雨でつるつる滑る。鎖にしっかりテンションかけて体をしっかり崖下に傾けないとだめだ。理屈ではそうなんだけど崖下の地面は遥か下。こええ・・・。 一度戻ってから(笑)意を決して一気に突入。最初の一歩目をクリアすればそれ以降は大したことはなかった。 安全なところまで行き後ろを振り返る。木川さんが「カニの横ばい」に入って来るが「落ちるなよー」と祈るばかり。 登りの時に鎖の使い方は伝えてあるけど知っていても恐怖心があると難しい。気のきいたアドバイスでもできるといいのだが けっきょく気合いで行くしかないので見守るしかできなかった。続いて土生さんも最初の一歩目で「!?」という素振りが見受けられたもののすんなりクリア。
その後はさくさく下山して一服剱を過ぎもうすぐ剣山荘というところで雲がぱーっと晴れた。晴れたと言っても青空ではなく曇ってはいて 視界が良くなった程度。それでもいままで何も見えない中を歩いていたので、剱沢小屋や剱山荘のある剱沢の全景を見下ろすことができ「おおー!」と歓声を上げる。 すごい勢いで雲が流れときどき隙間から剱沢や周辺の山々が姿を現すのを狙って写真を撮ったり楽しむことができた。 剱山荘まで降りたが視界が良くなった状態で安定してきたので「もう少ししたら剱岳も見えるかも」という期待も膨らむ。 剱山荘で売っていたバンダナのデザインが気に入ったので購入。土生さん・木川さんも色違いで購入(笑)
天気が落ち着いたので剱沢小屋に戻ったらテント場に集まってコーヒーでも飲もうという話をする。 それから剱沢小屋のご飯がとてもおいしかったのでテント泊でもご飯だけ小屋で食べれないか聞いてみようということになり 聞いてみるが宿泊者のみしか小屋で食事はできないのだそうだ(どこもそうなのでそうかなとは思っていたけど)。 ここの料理長?は割烹の職人さんだそうでとにかくご飯がおいしいそうなのでちょっと残念だった。
16時すぎにテント場へ集合・・・と思ったら急に風雨が強くなった。土生さんがワインを持ってきて「とりあえず乾杯だけでもしよう」ということになり ツェルトの横でもう一枚持ってきたツェルトを3人でかぶって無理やり乾杯。そんなことをしている間に暴風雨になり土生さん・木川さんは「きゃーきゃー」大騒ぎ(笑) 「こんな中でビバークするなんてありえない」という結論に至ったようだった(でも何気に楽しそうだった)。のんびりしていられる状況ではなくなったので再び1人ビバーク体制になる。
風雨が少し収まった隙にトイレに行ったりお湯を沸かしたりしてツェルトへ逃げ込む。暴風雨はずっと続くのではなく、時々おとなしくなる瞬間がある。 おとなしい時間は数分しかない場合もあるけど、ずっとではなく波がある。時間が早かったのでパソコンで文書作成しようとするが 今日は昨日よりも風雨が強いのかツェルトは両側から風に押しつぶされるように変形してくるし、天井からは水がポタポタ落ちて来るし、 落ち着いてパソコン作業していられる状況ではなかった。シュラフカバーに入っていないと服が濡れてしまうので早めにシュラフカバーをかぶって寝る。
今日も長袖シャツ・ロングタイツの上にレインウェアを着てシュラフカバーという形で寝ていたが、 前日は乾いていたレインウェアが今日は内側までしっかり濡れてしまっているので不快感が増している。 足先の寒さは日中行動用のハーフパンツに足を入れて寝ることで解決。2〜3時間置きに目が覚めるがしっかり睡眠を取ることができた。
■8/19(金)
5時半に起床し荷物をまとめてツェルトの片付け。強風でポールが緩やかに曲がってしまっている。 相変わらず雨が降っていたのでお湯を沸かすのが面倒で朝食は抜きにした。 ただ明け方に目が覚めたときにポテトチップを食べているのでカロリー的には問題ないだろう。 6時10分ごろ土生さん・木川さんがテント場に上がってきた。今日は時間にゆとりを持たせ、まっすぐ室堂に戻り乗り物を乗り継いで扇沢へ戻り、温泉・観光とつなげる予定。 剱御前小屋に向かってゆっくりしかし足は止めずにたんたんと登る。出発前はすべての衣服が湿っぽく(靴下とシューズは毎日ずぶ濡れ) 不快感満点だったが動き始めてしまえば気にならない。登りのコースタイムは1時間と登山地図に書かれていたが30〜40分ほどで剱御前小屋に到着。 しかし剱沢小屋からテント場までが10分近く離れているのでこんなもんかな。
剱御前小屋からは下りのみ。調子良く下って途中で団体さんを抜かす。ここも意外とあっさり雷鳥沢のキャンプ場へ到着。 ここから室堂バスターミナルにまっすぐ向かう道と地獄谷経由の道に分かれている。どちらに行っても距離は大して変わらなさそうなのと 行きは地獄谷を通らなかったので地獄谷を通って帰ることにした。最初は「温泉の臭いがするー」とご機嫌で歩いていたが 「有毒ガスに注意・・・止まらずに通りぬけてください」と看板があったあたりから強烈な臭いに・・・一時は体の動きが鈍くなるほど。 こんな強烈な温泉のガスは初めての経験だった。階段を上って室堂バスターミナルへフィニッシュ。
わりといいペースで歩いて来れて室堂到着が9時前だったが、お腹が空いてきたのでコーヒーでも飲みますかということになったが レストランがオープンしていなかったのとトロリーバスの時間がちょうど良かったので、とりあえず扇沢へ向かい途中のどこかで少し休憩ということにした。 しかし行きと違ってこんなに早い時間に扇沢へ向かう人が少ないためか、やたらと乗り物の乗り継ぎが良く休憩時間なし。 トロリーバスに行者さんが2人乗っていて土生さんが話しかけたら延々とうんちくを語りだしていた。多少興味はあるけどちょっと疲れているので話には加わらず知らんぷり。 行者さんは奈良からやってきていて立山の雄山にお参りをして長野側に抜け戸隠・善光寺などに立ち寄りさらに北を目指すようだった。 車で立山まで来て車の回送サービスで扇沢に回してもらいまた車で行くらしい。交通機関を駆使してまわっているのがイメージと大きく違っている(笑)
さくっと扇沢に到着し車に戻る。天気が悪いのは山だけかなと思っていたが下界もあまり天気は良くなく涼しい。東京方面も大雨になっているようだった。 車で大町温泉・薬師の湯へ。スキーヤー時代によく立ち寄っていた温泉。露天風呂が広くて気持ちがいい。温泉が終わってから「おいしい蕎麦を食べたい」というリクエストを受けて 新行の蕎麦集落へ。ここは蕎麦畑の中に何軒かの蕎麦屋があるのだが、いつも行く美郷というお店に行った。ここは国道からは少し離れていて普通の通りすがりの観光客は まずこない場所だが地元の人の評価の高いお店だ。土生さん・木川さんが蕎麦も景色もとても気に入ってくれた様子だったので、次は鬼無里のいろは堂に案内したくなった。
松本在住時代は遠くから友人が遊びにくると白馬方面を案内した後、新行の蕎麦かおやきのいろは堂に案内することが多く誰にでも気にいってもらえるので、 今回は松本経由で帰ることにしていたが予定を変更していろは堂に連れて行くことに。いろは堂もおやきはもちろんお店のたたずまいなども風情があって素晴らしい。 おやきも大ヒットで2人ともお土産に数千円分買いこんでいました。それから戸隠連峰が見える展望台に立ち寄って上信越道・関越道経由で帰宅。 帰りの車の中ではいろんな話で盛り上がって楽しかった。

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