北アルプス縦走(扇沢〜爺が岳〜烏帽子岳〜高瀬ダム)
2008/08/13(水)〜15(金)
行程表・装備表はこちら(タイムは休憩時間込み)
 
8月13日(水)扇沢〜種池山荘〜針の木小屋

NMCのminoさんと北アルプス縦走。minoさんは本物の山屋で山岳ランナーなのでたくさんのことを学んで来るつもり。扇沢から種池山荘(爺が岳)に登り稜線をたどって上高地を目指す。今回は2つの制限(ルール)を付けておこなう。「山小屋に宿泊しないこと」「食糧は自分で持って行くものだけで済ませること」。7時20分に扇沢を出発。柏原新道で種池山荘に登る。良く晴れていて非常に暑いが体の調子は良く前の登山者をどんどん抜かして標高を上げていく。少し汗をかき過ぎかなと思った。
種池山荘で小休憩したあと針の木岳方面へ進む。ここから新越山荘付近まではなだらかな稜線で走れる区間なのだが荷物もそこそこ重いし先が長いので走らずに歩きで進む。途中で水を飲んでも吸収されていない感じがあり気分が悪くなってきたのでペースダウン。柏原新道の登りで調子に乗りすぎたか・・・。水を少しずつ飲みながらゆっくり進んでいると調子が良くなってきた。新越山荘で一度ザックを下ろし少し長めの休憩。お湯を沸かして味噌汁を飲む。これで水分塩分はしっかり戻せたはず。しかしその後も気持ち悪さは回復したものの登りで力が出ずペースは落ちて行く。
今日の山場と考えていたスバリ岳よりも手前でかなり疲れてしまった。 スバリ岳に向かって西側に黒部湖を見ながら黙々と進む。少しエネルギー切れな感じでふらふらしてきたので少し休憩にしてもらって補給しようと思いminoさんに声をかけようとしたときに転んでしまい岩で手のひらを切ってしまい流血。ここで治療と補給をしてから再び進む。
スバリ岳への急激な登りをいかに楽にクリアできるかをポイントにしていたので、疲れていたがスバリ岳の登りはゆっくりながら脚を止めずに一気に登りきった。天気は下り坂な感じでときどき小雨が降ってくるがスバリ岳を越えたときには次の針の木岳の山頂の雲は晴れてきていたのでこのまま雨に降られずに針の木小屋まで行けそうな感じ。針の木岳の登りに差しかかったときに立山側から雷の音が聞こえてきて少しずつ近づいてくる感じだったので針の木岳も途中で休憩を入れずに一気に通過。
当初の予定では今日中に船窪小屋まで行かないと3日間で上高地は厳しくなるのだがとても無理な感じだったので、今日は山に体を慣らすと割り切って針の木小屋で終了することにする。自分は疲れ切ってしまったのでテント場でツェルトを張る元気もなく山小屋泊することにする。食事も夕食のみ山小屋の温かい食事。前日あまり寝る時間もなかったので夕食後19時ごろに就寝。
8月14日(木)針の木小屋〜烏帽子小屋

朝4時半ごろ出発の準備をしてテント場に向かう。今日は午後から天気が崩れ雨になる予報。 それでも朝からどんより曇っていて直射日光はない。minoさんはすでに朝食を済ませていたので お湯を沸かしてアルファ米に注いでおき、とりあえず出発して途中で食べることにする。 5時25分ごろ針の木小屋を出発。蓮華岳の登りの途中でライチョウを3羽見た。蓮華岳山頂手前でお湯を入れておいたアルファ米を食べる。アルファ米がなかなか喉を通らず時間がかかってしまった。アルファ米は便利だがもっと食べやすくて食欲のわく食べ物を考えなければいけないかもしれない。
蓮華岳からは細かい岩が堆積している登山道を一気に標高差500mほど下る。少し走りたい気分になったがやっぱり先のことを考えると余計な疲労がありそうな行動に出るべきではない。この蓮華の大下りのあと北葛岳、七倉岳と標高差300mほどのピークを2つ越える。今日の行程はこういった標高差300m程度のアップダウンがひたすら繰り返されるのでいくつ越えていかなければいけないのか考えるとうんざりする。が、この時点ではまだ体調も良かったので「どちらにしろ上高地までに合計8000m登らなければいけないので気にすることはない」と開き直ることができた。
調子よく2つのピークを越えて9時過ぎに船窪小屋に到着。朝食から3時間経過し次の烏帽子小屋までかなり時間があるので念のためこの小屋でラーメンを食べていくことにする。「食糧はすべて自分で用意」というのが今回のルールでもあるが上高地にたどり着くのを優先したいのでもう山小屋でもなんでも利用できるものは利用しようと考えていた。
少し長い休憩のあと船窪小屋を出発。登山地図のテント場のところに水場ありのマークがあったので 水を汲むために水場を探す。看板に書かれた矢印のほうに進んで行ったら本来のルートからはだいぶ外れて沢を降りてきてしまった。「こんなに遠いなら水汲みにこなければよかったな」と思いつつ水を汲んでから再スタート。地図上では短い距離に見える船窪岳は急激な下り登りの連続と荒れた登山道で身体的にも精神的にもかなりきつい。途中の針の木谷との分岐に「烏帽子小屋まで7時間」と書かれた立札を見てさらにうんざりする。
船窪岳第2ピークへの登りで烏帽子小屋から来たと思われる登山者とすれ違う。「これからですか?」と言われてminoさんと「何がこれからなんだろうと」話す。まだ先はかなり長いので船窪岳付近のような荒れた道がずっと続くようだと厳しい。船窪岳第2ピークを越えるときれいな登山道になりかなり歩きやすくなった。樹林帯の登山道を進む。東側の不動沢の向こう側に数時間前に水を汲みに降りた沢が見えていたがいくら進んでも東側を見ると同じ沢が見えていてちょっときついものがあった。途中で休憩をしていると雷の音が聞こえてきてどんどん近付いてきた。不動岳が目の前に見えていたので雷が来る前に山頂を越えてしまおうとがんばる。なんとか雷が来る前に山頂に到着。
不動岳の山頂付近は周りに何もない気持ちのいい稜線。ここで雷に巻き込まれたらどうしようもない。minoさんに「ここで雷に追いつかれたらどうします?」と聞くと「ハイマツ帯に隠れていないフリをしよう」と言う。背後から雷雲が迫っていたので急ぎ足で先に進み低いところへ逃げる。ふと後ろを振り返ると雷が近くまで来ているのにminoさんは登山道にしゃがんで花の写真を撮っていた。
不動岳から下っているときすでに不動岳山頂付近は雲に覆われていて危険な雰囲気。雷が来る前に降り初めることができたのでちょっと安心していると前からも雷がきた。次の南沢岳の登りに差しかかる手前の樹林帯で完全に雷に追いつかれたので一本だけ高い木があったりしない場所で雷が過ぎるまで待機することにする。人が集まっていると落雷しやすいのでminoさんが姿を隠した藪とは別の藪の中にしゃがみ込む。30分ほど待機して激しい雨が来てそれが小降りになったので、もう大丈夫だろうと行動開始。雷はまだ鳴っていたが理屈では一度激しい降雨があった場所にもう一度雷が発生することはないので大丈夫なはずだ。
南沢岳を越えて烏帽子小屋が近くなってきた。疲れていたし雨にも濡れたので「今日も山小屋泊だなー」と弱気になりながら進む。山小屋の温かい食事が待っていると思わなければやっていられない。ちなみに今日の時点で烏帽子小屋までしか行けないということは予備日を入れても上高地までは行けないことになってしまう。疲れ切って17時24分に山小屋到着。昨日よりは体調はいいが迷わず山小屋泊の手続き。minoさんは今日もツェルト泊を選択。テント場の使用の申し込みを書き始めたが書いている途中ですごい雨が降ってきたので山小屋素泊まりに変更。自分は山小屋の食事をお腹いっぱい食べて明日に備える。
明日のコースをどうするか?と考え始めたが、上高地まではもう行けないし、これ以上進むとエスケープルートが非常に長くなってしまう。進むとすれば野口五郎岳の少し先まで行ってからエスケープで湯俣温泉〜高瀬ダムと行くしかない。湯俣温泉から高瀬ダムは平坦な道を何時間も歩くことになる。加えて明日の昼以降また天気が悪くなるという予報もあったので明日は烏帽子小屋からブナ立尾根を通って高瀬ダムに降りるのが無難ではないかと思う。
8月15日(金)烏帽子小屋〜高瀬ダム

朝は5時半ごろのんびり起床。他の登山者はもう朝食を済ませて出発している。自分はもうリタイアしてまっすぐ高瀬ダムに降りる気100%。一応minoさんとどうするか考えるがもう一日天気の悪い山を歩いて宿泊するには心のスタミナが足りない。熟練者のminoさんには申し訳なかったが降りるという選択をしてもらった。 ただここからリタイアなら次の機会には高瀬ダムから数時間で上がって来て続きができるので区切りがいいと言えば区切りがいい。6時半ごろ出発して高瀬ダムへ下山する。9時ごろ下山完了。ちょうど観光客を連れてきていたワンボックスのタクシーがいて信濃大町駅まで他のお客さんに便乗させてもらえることになった。
10時過ぎに信濃大町駅到着。電車の時間まで50分近く待合室で待つ。丸2日間動いたのに出発地と到着地の最寄駅が信濃大町駅で一緒なのが納得いかない。

同じ時期に「トランスアルプスレース」という日本海から北アルプス、中央アルプス、南アルプスを通って太平洋にゴールするレースが参加者20人ほどで行われている。彼らは5〜6日で日本縦断してしまうのに、自分は2日かけてちょっとしか移動できてなく、タイムを振り返ってみると登山マップの標準タイムよりもわずかに速いだけのペースでしか進めていない(停止時間も含めているからだけど)。改めて彼らとはレベルが違いすぎると思った。「すごいと言っても同じ人間だ」と思っている部分もあったが、同じ生き物とは思えない(笑)
今回も反省点は給水給食を行動しながらうまくできていないこと。午前中は調子がいいが午後になるとどうしてもペースが落ちてきてしまう。一般に行動食として適しているものが自分にとっては食欲のわかないものであったりするのが大きな原因になっていると思う(無理やり食べるしかないのかもしれないが)。ただグミとドライフルーツだけは行動しながら苦もなく食べれるのでもう1品くらいいいものを見つければなんとかなるかもしれない。あと主食になるアルファ米ものどを通りにくいので多少体積が大きくなるのを許容できればフリーズドライのうどんやそばなど汁のあるものを中心にできるといいと思った。

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